金星の1日はなぜ1年より長いのか?|恒星日と太陽日のねじれ

「金星は1日が1年より長い」という話を聞いたことがあるかもしれません。金星が1回自転するのに約243日かかるのに対し、金星が太陽を1周する(1年にあたる)のは約225日。たしかに数字だけを見ると、1日の方が1年より長いことになります。

ところが、この「1日」という言葉には、実は2つの異なる意味が隠れています。この記事では、金星の暦にまつわるこのねじれを、2種類の「1日」の違いから見ていきます。

Image Credit: NASA
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金星の「1日」には恒星日と太陽日の2種類がある

天文学では、惑星の自転にもとづく1日の測り方に、2つの種類があります。

1つは「恒星日」で、遠くの星を基準に、惑星がちょうど1回転するのにかかる時間です。金星の恒星日は約243日で、これが「金星の自転周期」として紹介される数字です。

もう1つは「太陽日」で、その星の空で太陽が同じ位置に戻ってくるまでの時間、つまり日の出から次の日の出までの時間です。地球ではこの2つはほぼ同じ長さ(約23時間56分と24時間)ですが、金星ではまったく異なる長さになります。

金星はなぜ逆向きに自転しているのか

この違いを生んでいるのが、金星の自転方向です。太陽系のほとんどの惑星は、公転と同じ向きに自転していますが、金星だけは公転と逆向き(逆行)に自転しています。

太陽日の長さは、惑星の自転と公転による「太陽の見かけの動き」の組み合わせで決まります。自転が公転と同じ向きなら、公転による動きが自転の効果を打ち消す方向に働くため、太陽日は恒星日より長くなります。しかし金星のように自転が逆向きの場合、公公転による太陽の見かけの動きと逆行自転による見かけの動きが同じ方向に働くため、太陽は恒星日に比べて早く同じ位置へ戻ってきます。

金星の太陽日は約117日になる

金星の恒星日(約243日)と公転周期(約225日)から太陽日を計算すると、およそ117日になります。つまり、金星で日の出から次の日の出までの長さは、約117日ということです。

ここで注目したいのは、この太陽日(約117日)は、金星の1年(約225日)よりも短いという事実です。「1日が1年より長い」という有名な話は、恒星日を基準にした場合にだけ成り立つ表現で、実際に金星の地表で体感される昼と夜のサイクル(太陽日)でみると、1年の間に約2回の日の出を迎えることになります。

金星の「1日が1年より長い」の本当の意味

「金星の1日は1年より長い」という話は、間違いではありませんが、恒星日という特定の定義に基づいた表現です。金星の自転が公転と逆向きであるという1点の違いが、恒星日と太陽日の長さの関係を大きくねじれさせ、「1日が1年より長い星」でありながら「1年に2回日が昇る星」でもあるという、一見矛盾した2つの顔を金星に与えているのです。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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