アルデバランとは?|おうし座の赤い目が「ヒアデス星団の一員ではない」理由と、夜空の遠近法

冬の夜空、おうし座の顔をかたどるV字の星の並びのなかに、ひときわ赤くまたたく星があります。おうし座のアルデバラン、牛の赤い目を表す星として知られています。

このアルデバランは、V字を作る星の集まり、ヒアデス星団の一員のように見えます。ところが実際には、アルデバランはこの星団の仲間ではありません。まったく無関係な星が、たまたま同じ方向に重なって見えているだけなのです。ここには、夜空を平面としてしか見られない私たちの「遠近法」の落とし穴が隠れています。

Image Credit: NASA

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アルデバランとは?|牛の目に輝くオレンジの巨星

アルデバランは、おうし座のα星です。見かけの等級は約0.85等で、全天では14番目に明るい恒星です。地球からの距離はおよそ65光年。表面温度は約3900度と低めで、それがオレンジ色の光の理由です。

直径は太陽の40倍を超え、年老いて外層がふくらんだ「赤色巨星」の仲間です。かつては太陽より少し重い星でしたが、中心の水素を使い果たし、大きく膨張した段階にあります。おうし座の顔の位置で赤く輝くこの星は、古くから「牛の目」として親しまれてきました。

ところが、この星にはひとつ意外な事実があります。アルデバランは、V字に並ぶヒアデス星団のなかに、ぴたりとおさまって見えます。


ヒアデス星団とは|同じ場所で生まれた星の集まり

ヒアデス星団は「散開星団」と呼ばれる星の集まりです。星団とは、同じガス雲からほぼ同時に生まれ、たがいの重力でゆるやかにまとまって、同じ方向へ動いている星の一家のことです。

ヒアデス星団までの距離は、およそ150光年。星団のメンバーはこの距離にそろって位置し、そろって同じ向きに空を移動しています。生まれも、距離も、動きも共通する——それが「星団の一員」であることの条件です。

ここでアルデバランの距離を思い出してください。アルデバランは約65光年。ヒアデス星団の約150光年に対して、半分以下の距離です。つまりアルデバランは、ヒアデス星団のはるか手前に浮かぶ、まったく別の星なのです。


夜空の遠近法|重なって見えても、奥行きは違う

なぜ、これほど距離の違う星が同じ場所に見えるのでしょうか。

理由は、私たちが夜空を「平らな天井」としてしか見られないからです。星までの距離は、肉眼ではまったくわかりません。手前の星も、はるか奥の星も、同じ一枚の天井に貼りついた点として見えてしまいます。窓の手前を横切る鳥と、遠くの山が重なって見えるのと同じです。アルデバランとヒアデス星団も、たまたま地球から同じ方向に並んでいるだけで、実際の奥行きはまるで違います。

では、どうやって「仲間かどうか」を見分けるのか。決め手は距離と運動です。ヒアデス星団のメンバーは同じ距離にそろい、そろって同じ向きへ動いています。一方アルデバランは、距離も、空を動く向きも星団とは食い違っています。生まれも所属も違う星が、地球から見た一点でたまたま出会っているだけ——それがアルデバランなのです。


今夜、赤い目の奥行きを想像する

冬(12月から3月ごろ)の宵、南の空のオリオン座から三ツ星を右上へたどると、赤いアルデバランと、その周りに広がるV字のヒアデス星団に行き当たります。さらにその先には、青白く集まったプレアデス星団(すばる)も見えます。

肉眼では、アルデバランはV字の星団にぴたりとおさまって見えます。けれど本当は、赤い目だけが約65光年の手前に浮かび、V字の星団は約150光年の奥に広がっています。同じ一点に見える星が、実は二重の奥行きを持っている。そう知って見上げると、平らに見えた夜空に、そっと立体感が生まれるはずです。


まとめ

アルデバランはおうし座の赤い一等星で、太陽の40倍を超える直径にふくらんだ赤色巨星です。その最大の特徴は、背後のヒアデス星団の一員のように見えて、実はまったく無関係な手前の星だということです。

アルデバランは約65光年、ヒアデス星団は約150光年。距離も運動も食い違う両者が、地球から見た一点でたまたま重なっているだけです。星が仲間かどうかは、見かけの近さではなく、距離と運動で決まります。

今夜、牛の赤い目を見つけたら、その奥に広がる星団との「奥行きの差」を想像してみてください。夜空は平らではありません。


参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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