星はどれも丸い球だと思われがちです。太陽も、多くの星も、たしかにほぼ完全な球体をしています。ところが全天の一等星のなかに、球とは呼べないほど大きく潰れた星があります。エリダヌス座のアケルナルです。
この星は、猛烈な速さで自転することで、赤道方向が大きく膨らんだ「つぶれたミカン」のような形をしています。その扁平さは、知られている恒星のなかでも極端な部類です。

アケルナルとは?|南天の青白い高速自転星
アケルナルは、エリダヌス座のα星です。見かけの等級は0.46等で、全天では9番目に明るい恒星です。地球からの距離はおよそ139光年。表面温度は約1万5000度と非常に高く、青白く輝きます。
ただし、この星を日本の本州から見ることはできません。アケルナルは天球のかなり南に位置するため、本州の緯度では地平線の上に昇らないのです。沖縄など南の島まで行けば、冬の南の低空にかろうじて姿を見せます。名前の由来はアラビア語で「川の果て」。長々と流れるエリダヌス座(川の星座)の南の端に輝くことにちなみます。
この星が特別なのは、明るさでも色でもありません。その「形」です。

球ではなく「つぶれた」星|扁平化という現象
アケルナルは秒速約250〜300kmという非常に速い速度で自転しています。その速さは、星がバラバラに壊れる限界(臨界速度)に迫るほどです。
星がこれほど速く回ると、赤道付近のガスに強い遠心力がはたらきます。遠心力とは、回転する物体を外側へ押し出そうとする見かけの力のことです。回転する円盤の上のものが外へ滑り落ちるのと同じで、アケルナルの赤道付近のガスは外側へ引っ張られ、星の形そのものを変えてしまいます。
その結果、アケルナルの赤道半径は、観測によれば極半径より約5割も大きくなっています。上下から押しつぶされ、横に大きく張り出した形。もし真横から見れば、球ではなくラグビーボールを寝かせたような姿に見えるはずです。これは、知られている恒星のなかでもとりわけ極端な扁平です。
同じように高速自転で扁平になった一等星に、しし座のレグルスや、わし座のアルタイルがあります。アケルナルは、そのなかでも群を抜いて潰れた星なのです。

扁平がもたらすもの|赤道が暗く、極が明るい
高速自転による変形は、形だけでなく星の表面の明るさにも影響します。
赤道方向は遠心力で膨らんでいるぶん、中心から遠くなり、その場所での重力が弱まります。重力が弱い場所ほど、内部から運ばれてくるエネルギーが少なくなり、温度も低くなります。逆に、あまり膨らんでいない極付近は重力が強く、高温で明るくなります。これを「重力暗化」と呼びます。
つまりアケルナルは、極が明るく高温で、赤道が暗く低温という、場所によってムラのある星です。私たちが目にする明るさや色は、この不均一な表面を、たまたま地球へ向いている角度から平均して見たものなのです。

今夜、形を想像しながら南の空を
アケルナルは本州からは見えませんが、南西諸島まで南下すれば、冬(12月から1月ごろ)の南の低空にその青白い光を探すことができます。エリダヌス座の川の流れを、リゲルのあたりから南へたどっていった果てに輝く星です。
たとえ直接見えなくても、この星の姿は想像できます。臨界速度に迫る速さで回り続け、赤道が5割も膨らみ、極が明るく赤道が暗い、球とは呼べないほど潰れた星。夜空の点を「まん丸い球」と決めつけずに見上げると、星の形にも個性があることに気づくはずです。
まとめ
アケルナルはエリダヌス座の青白い一等星で、その最大の特徴は、知られている恒星のなかでもとりわけ極端な扁平化です。臨界速度に迫る高速自転による遠心力で、赤道半径が極半径より約5割も大きくなっています。
さらに扁平化は重力暗化を引き起こし、極が明るく赤道が暗いというムラを生みます。同じ現象はレグルスやアルタイルでも起きており、アケルナルはその最も極端な例です。
星はまん丸とはかぎりません。今夜、南の空を思い浮かべるとき、遠心力に引き延ばされた星の形を想像してみてください。
参考文献
- Star Facts|Achernar (Alpha Eridani): The Flattest Bright Star in the Sky
- Domiciano de Souza, A. et al. (2003). The spinning-top Be star Achernar from VLTI-VINCI.