冥王星とは?|なぜ惑星から外されたのか?準惑星の定義と理由

冥王星は、2006年に惑星から「準惑星」へ分類が変更されました。

理由は、冥王星が小さかったからではありません。冥王星の軌道の周辺には、同じカイパーベルトに属する多くの天体が存在し、惑星に求められた「軌道の近くを掃除している」という条件を満たさなかったためです。

この変更の背景には、1990年代以降に次々と発見された、冥王星と似た太陽系外縁の天体たちがありました。

では、なぜ冥王星は惑星になれるほど大きく成長しなかったのでしょうか。その答えをたどると、私たちの太陽系が、実は「8つの惑星だけ」でできているわけではないことが見えてきます。

2006年、冥王星は惑星という肩書きを失いました。

しかし、それは冥王星そのものが変わったからではありません。私たちが太陽系について知ることが増えたことで、「惑星とは何か」という分類のルールそのものが見直されたのです。

冥王星の画像
Image Credit: NASA/JHU APL/SwRI
目次

冥王星はなぜ「惑星」から外されたのか

準惑星の大きさ比較

冥王星が惑星から外された理由は、「小さすぎたから」ではありません。大きな理由の一つは、冥王星が太陽系の外縁に広がる、たくさんの小天体の集団の中に存在していることです。

地球や木星のような惑星は、太陽の周りを回る過程で、自分の軌道の近くにある小さな天体に強い重力の影響を与え、取り込んだり、別の軌道へ移動させたりします。

ここでいう「軌道を掃除する」とは、周囲からすべての天体を完全に消してしまうことではありません。その領域を、自分の重力によって大きく支配できるほど成長している、という意味です。

一方、冥王星の軌道の周辺には、同じカイパーベルトに属する多くの天体が存在しています。冥王星は、この領域を自分の重力で支配できるほど大きく成長していません。

1990年代以降、望遠鏡による観測が進むにつれて、冥王星の周辺には、冥王星と似た性質を持つ太陽系外縁天体が次々と発見されました。

2005年には、冥王星に匹敵する大きさを持つ天体「エリス」も発見されます。現在では、直径は冥王星のほうがわずかに大きい一方、質量はエリスのほうが大きいことが分かっています。

「冥王星だけを惑星として扱うのは適切なのか?」

こうした疑問から、惑星とは何なのか、その定義そのものを見直す議論が始まりました。

冥王星はどうやってできたのか|なぜ惑星になれなかったのか

では、なぜ冥王星の周囲には、同じような氷の天体がたくさん残っているのでしょうか。

その背景には、冥王星が生まれた太陽系外縁の環境と、巨大惑星の重力の影響があります。約46億年前、誕生したばかりの太陽の周りには、ガスやちりからなる円盤が広がっていました。太陽から遠い低温の領域では、水などの物質が氷として存在でき、やがてそれらが集まって小さな天体が作られていきました。

冥王星も、こうした太陽系外縁の天体の一つとして形成されたと考えられています。現在の冥王星は、岩石と氷からなる天体で、表面には窒素やメタンなどの氷も存在しています。

太陽系の外側でも、天体どうしが衝突・合体して、より大きな天体へ成長することはありました。しかし、この領域では海王星をはじめとする巨大惑星の重力が強く影響しています。

海王星の重力によって外縁部の小さな天体の軌道が大きく変化すると、天体どうしが穏やかに衝突して成長することが難しくなります。さらに、太陽系初期には巨大惑星の軌道そのものが変化し、その過程で太陽系外縁にあった物質の多くが散らされたと考えられています。

NASAによると、現在のカイパーベルトに残っている物質は、もともと存在していた材料のごく一部です。つまり、冥王星は「惑星になる資格がなかった」のではありません。

惑星へ成長するための材料が十分に残らない、太陽系外縁の環境で生まれた天体だった。

そう考えると、冥王星がカイパーベルトの中で大きく成長した一方、地球や海王星のような惑星にはならなかったことが見えてきます。

それでも冥王星は、太陽系外縁に残された天体の中では特に大きく成長した一つです。直径は約2,377キロメートルで、地球の直径の約5分の1にあたります。この大きさは、2015年に冥王星を通過したNASAのニュー・ホライズンズ探査機による観測で詳しく確かめられました。

太陽系の外側に広がる「カイパーベルト」

ここで、私たちの太陽系の地図は大きく書き換わることになります。

太陽系の外側は、何もないスッカスカの空間ではありませんでした。そこには、海王星の外側を取り囲む、巨大な氷の天体の帯が広がっていたのです。

それが、エッジワース・カイパーベルトです。

カイパーベルトは、海王星のさらに外側に広がる、氷や岩石からなる小天体が数多く存在する領域です。形としてはドーナツ状に広がっていますが、土星の環のように天体が密集した一本のリングではありません。

冥王星は、太陽系の果てをポツンと回る孤独な惑星ではありません。

この巨大な領域の中で、多くの天体とともに太陽の周りを公転している、太陽系外縁天体の一つなのです。

こうした天体が次々と発見されたことが、2006年の「惑星とは何か」という問いにつながっていきました。

冥王星の軌道を描いてみると、その関係はもっとはっきりします。

太陽系の軌道について図解
Image Credit: NASA

冥王星の軌道は、惑星たちが並ぶ面から大きく傾いた、細長い楕円です。太陽に最も近づくときと最も遠ざかるときでは、太陽までの距離が大きく変化します。1979年から1999年までの20年間、冥王星は海王星よりも太陽に近い場所を回っていました。それなのに、なぜ冥王星と海王星は衝突しないのでしょうか。

その秘密は、二つの天体の軌道が「3対2」のリズムで結びついていることにあります。

海王星が太陽を3周する間に、冥王星は2周します。この関係が保たれているため、二つの天体が同じ場所で接近することはありません。冥王星の軌道は海王星の軌道と交差するように見えますが、実際にはこの軌道のリズムによって、衝突を避ける関係になっているのです。

なお、冥王星が最も近づく大きな惑星は海王星ではなく、天王星です。

2006年8月24日、プラハ|「惑星の新定義」が発表された日

冥王星の分類が変わった日付は、はっきりしています。

2006年8月14日から25日にかけて、チェコのプラハで国際天文学連合(IAU)の第26回総会が開かれました。この総会で、太陽系の天体を分類するための「惑星」の正式な定義が採択されました。

最初に出てきた案は、今の定義とはまるで違うものでした。

8月16日に公表された原案では、「自分の重力によって丸い形になっていること」が惑星の条件の柱とされました。この案が採用されていれば、冥王星は惑星のまま残り、小惑星帯のケレス、冥王星の衛星カロン、そして発見されたばかりのエリスも加わって、太陽系の惑星は12個になるはずでした。

しかし、議論の末、この原案は採用されません。

8月24日、総会の最終日に採択されたのが決議5Aです。

ここで惑星は、次の3つをすべて満たす天体と定められました。

  • 太陽のまわりを回っていること
  • 自分の重力で、ほぼ球形になっていること
  • 軌道の近くを、自分の重力によって支配できるほど十分に掃除していること

原案になかった3つ目の条件が、決定的でした。冥王星はこの条件を満たしません。同じ日に採択された決議6Aによって、冥王星は「準惑星」に分類されました。投票は賛成237、反対157、棄権17。決して満場一致ではありませんでした。

準惑星とは、太陽の周りを回り、自らの重力によってほぼ球形になっているものの、軌道の周辺を支配できるほど成長していない天体です。

ここで重要なのは、この日に冥王星そのものが変化したわけではないことです。新しい観測によって冥王星の性質が変わったのではありません。

私たちが太陽系の天体を分類するための「言葉のルール」が変わったのです。

見えない氷の帯を想像する夜

今夜、南の空を見上げたとき、冥王星そのものを見ることはできません。しかし、そこには私たちが長年気づかなかった、巨大な氷の天体群が広がっています。

冥王星が惑星から外れた理由を知ることで、私たちの目は「9つの惑星」という狭い枠組みを飛び越え、さらに遠くへと広がる太陽系の構造を捉えることができます。

見えないからこそ想像できる、太陽系の本当の広がり。そして、その氷の帯は「惑星になれなかった失敗作」の集まりではありません。そこには、太陽系が生まれたころに存在していた物質の一部が、巨大惑星の重力による散乱などを経ながら、現在まで残されています。

カイパーベルトは、太陽系がどのように形作られたのかを知る手がかりを残した、いわば太陽系の「古い記録」のような場所なのです。

冥王星が惑星ではなくなったことで、私たちは一つの天体を失ったわけではありません。むしろその向こう側に、これまで見えていなかった太陽系の広がりを知ることになりました。

今夜の空は、そんなことを想像すると、いつもより少しだけ奥行きを持って感じられるかもしれません。

参考文献

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この記事を書いた人

夜空のしくみを物理からやさしく解説する天文メディア。執筆者の専門は電気化学で、国立天文台やNASAなどの資料を確かめながら書いています。

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