夏から秋の夜、街明かりの少ない場所で空を見上げると、淡い光の帯が空を横切っています。天の川です。あの光の正体は、数千億個の星が集まる銀河の円盤を内側から見た姿なのです。
では、秋の宵に東の空へ目を移したときに見える、ぼんやりとしたシミのような光は何でしょうか。アンドロメダ座の中にある、ピントの合っていない星のような光。あれは星ではありません。私たちの銀河とは別の、もうひとつの銀河です。しかも今度は、内側からではなく外側から眺めています。
天の川も、あの淡いシミも、どちらも銀河と呼ばれます。ではそもそも、銀河とは何なのでしょうか。星がたくさん集まっていれば銀河なのでしょうか。
銀河とは何か|重力でまとまった巨大な天体
まず、銀河を大まかにどういう天体として捉えればよいか見てみましょう。
銀河とは、重力によってまとまった、星やガス、塵などからなる巨大な天体です。多くの銀河では、その周囲をダークマターの巨大なハローが取り囲んでいると考えられています。
ばらばらに散らばった星の寄せ集めではありません。重力によって、ひとつのまとまった系として存在していることが重要です。
規模を数字で見ておきましょう。私たちの天の川銀河には、およそ1000億から4000億個の星があります。直径はおよそ10万光年。光の速さで進んでも、端から端まで10万年かかる大きさです。
では、こうした銀河は宇宙にいくつあるのでしょうか。かつては1000億から2000億個と見積もられていました。ところが、ハッブル宇宙望遠鏡などの深宇宙観測をもとにした研究では、観測できないほど暗い銀河まで含めると、約2兆個になる可能性があるという推定も発表されています。見積もりにこれほど幅があるのは、暗くて遠い銀河がまだ見えていないからです。
つまり銀河は、宇宙にひとつだけ存在する特別な構造ではありません。宇宙を形づくる基本的な構造のひとつであり、観測可能な宇宙には数千億~数兆個規模の銀河が存在すると考えられています。天の川銀河も、そのうちのひとつにすぎないのです。

星団と銀河は何が違うのか|星の数だけでは決まらない
ここで素朴な疑問が出てきます。
夜空には、星がぎっしり集まった天体が他にもあります。
球状星団と呼ばれる天体は、数万~数十万個ほどの星がボールのように密集したものです。星が集まっているという点だけを見れば、銀河とよく似ています。
では、なぜ球状星団は銀河と呼ばれないのでしょうか。
実は、「星が何個以上あれば銀河」という単純な線引きはありません。
銀河と星団の境界には、分類が難しい天体もあります。そこで天文学者は、星の数だけでなく、天体の大きさや星の動き、星の年齢や化学組成、そして見えている物質だけでは説明できない重力があるかどうかなど、いくつかの特徴を組み合わせて区別しています。
その中でも、ダークマターの存在は重要な手がかりのひとつです。
ダークマターは、光を出さないため直接見ることはできません。しかし、星の動きなどを調べると、見えている星やガスだけでは説明できない重力が働いていることがあります。銀河では、この「見えない重さ」が大きな役割を果たしています。
一方、典型的な球状星団では、星の運動は見えている星の質量によっておおむね説明できます。
つまり、違いは単純に「星が多いか少ないか」ではありません。
銀河は、星の集まり方やその運動、そして周囲の見えない質量まで含めて見ると、星団とは異なる巨大な重力系として浮かび上がってきます。
ただし、すべての天体をこの線だけではっきり二分できるわけではありません。銀河と星団の中間のような性質を持つ天体もあり、どちらに分類するか議論されているものもあります。
だからこそ、「銀河とは何か」という問いは、実は見た目だけでは答えられないのです。

銀河の形は大きく3つ|渦巻・楕円・不規則

銀河を望遠鏡で撮影すると、形がはっきり分かれます。ここでは、銀河の形を大きく三つに分けて見てみましょう。
渦巻銀河は、回転する円盤に腕のような模様が巻きついた形です。天の川銀河も、隣のアンドロメダ銀河もここに入ります。中心を横切る棒状の構造を持つものも多く、天の川銀河はそのひとつです。円盤にはガスと塵が豊富に残っていて、今も新しい星が生まれています。中心の膨らみと円盤、それを包む球状の広がりという三層の姿も、渦巻銀河に共通する構造です。
楕円銀河は、まん丸に近いものからラグビーボールのように伸びたものまであります。円盤も腕もありません。ガスと塵が乏しく、新しい星があまり生まれていないのが特徴です。おとめ座にあるM87という楕円銀河は数兆個の星を抱えていて、天の川銀河を大きく上回ります。中心には超大質量ブラックホールがあり、そこから細く長いジェットが噴き出している姿が撮影されています。
不規則銀河は、決まった形を持たない銀河です。ちぎれたような姿、輪のような姿など、見た目はさまざま。比較的小さく、ガスに富んだものが多く見られます。
では、この形の違いはどこから来るのでしょうか。
鍵は、星の動きが揃っているかどうかです。渦巻銀河では、星やガスの運動に円盤に沿った規則的な回転運動が見られます。全体が一枚の円盤としてまとまって回転しているため、平べったい形に落ち着きます。回しながら広げていくピザの生地を思い浮かべると近いでしょう。
楕円銀河は違います。楕円銀河では、渦巻銀河のような規則正しい円盤運動ではなく、星がさまざまな方向に動く運動が目立ちます。全体としては、円盤よりも丸みを帯びた形になります。
では、なぜ揃わなくなるのでしょうか。有力な説明のひとつが、銀河どうしの合体です。二つの銀河が接近・合体すると、互いの重力によって星の軌道が大きく乱されます。円盤に沿ってそろっていた星の運動もかき混ぜられ、銀河全体が丸みを帯びた構造へ変化することがあります。また、合体に伴う星形成やガスの変化によって、やがて新しい星が生まれにくい銀河になる場合もあります。
つまり銀河の形は、その銀河がたどってきた歴史の記録なのです。回転が残っているのか、それとも一度かき混ぜられたのか。形は、その問いへの答えを表しています。
なお、天の川銀河とアンドロメダ銀河もいずれ接近すると予測されてきました。ただし2025年に発表された研究では、今後100億年の間に天の川銀河とアンドロメダ銀河が合体する確率はおよそ半分とされ、以前のように「将来必ず衝突する」とは言えないことが分かっています。

銀河も、ひとりではない|局部銀河群というご近所
最後に、銀河の外側へ目を向けます。
銀河は宇宙にぽつぽつと孤立して浮かんでいるわけではありません。天の川銀河は、50個を超える銀河が集まったグループの一員です。このグループを局部銀河群と呼びます。
その中で最も大きい部類に入るのが、アンドロメダ銀河です。距離はおよそ250万光年。ほかのメンバーは、星が数十億個ほどの小さな銀河が大半を占めます。天の川銀河とアンドロメダ銀河という二つの大きな渦巻銀河が、多数の小さな銀河を従えている構図です。
そして、この上にはさらに大きな階層があります。銀河団と呼ばれる集まりには、数千個の銀河が含まれることもあります。
星は銀河に集まり、銀河は銀河群や銀河団をつくります。さらに銀河群や銀河団は、宇宙の大規模な構造の中に分布しています。ただし、私たちがこの宇宙をどこまで見通せるかには限界があります。

今夜、別の銀河を自分の目で探す|アンドロメダ銀河

ここまで読んだうえで、秋の夜空に戻ります。
アンドロメダ銀河は、条件が良ければ肉眼で見えます。明るさは3.1等ほど。暗い場所では肉眼でも見えることがあります。見頃は秋から初冬にかけてで、11月ごろが最も観測しやすい時期です。
探し方はそれほど難しくありません。北の空のカシオペヤ座を目印にして、Wの形が指す方向を南へたどっていくと、アンドロメダ座の中に淡い光のにじみが見つかります。肉眼では星のようにしか見えなくても、双眼鏡を向ければ、細長い光の広がりとして確認できるでしょう。見かけの大きさは満月の6倍ほどもあるので、倍率の高い望遠鏡より視野の広い双眼鏡のほうが向いています。

そのとき目に届いているのは、250万年前にあの銀河を出た光です。
天の川は、自分がいる銀河を内側から見た姿。アンドロメダ銀河は、別の銀河を外側から見た姿。同じ夜空の中で、私たちは銀河を二つの角度から眺めていることになります。片方は自分の住所で、もう片方は隣家の明かりです。
数千億個の星をひとつに束ねているのは、目に見えない重力の働きです。その巨大な銀河を、私たちは今夜も地球の上から眺めています。

参考文献
- NASA Science|Galaxies
- NASA Science|Types of Galaxies
- NASA Science|Hubble Reveals Observable Universe Contains 10 Times More Galaxies Than Previously Thought
- NASA Science|Messier 31 (The Andromeda Galaxy)
- NASA Science|Messier 87
- Nature Astronomy|No certainty of a Milky Way–Andromeda collision