ダイナモ理論とは?|地球や太陽の磁場を生み出す「電磁誘導」の仕組み

方位磁針が北を指すのは、地球そのものが大きな磁石のようにふるまい、まわりに磁場をつくっているからです。磁場とは、磁石の力がはたらく空間のことです。地球の磁場は、太陽から吹きつける電気を帯びた粒子の流れ(太陽風)の多くをそらし、大気を守る盾の役割も果たしています。

では、地球の中には巨大な棒磁石が埋まっているのでしょうか。

そうではありません。地球の磁場は、置いてあるだけの磁石では説明できないのです。液体の金属が動き続けることで、磁場はいまも作り直されています。この記事では、流れる金属が自分で磁場を生み出すしくみ、ダイナモ理論を読み解きます。

Image Credit: NASA/Goddard/Aaron Kaase
目次

地球の中に巨大な磁石を置けない理由|キュリー温度と1万5千年

地球の内部は、中心から内核(固体)、外核(液体)、マントル、地殻の順に重なっています。磁場を生み出す主役は、地下およそ2,900kmから5,100kmにある外核です。外核は、鉄を主成分とする液体の金属でできています。

ここに永久磁石を置けない理由の一つが、キュリー温度です。

  • キュリー温度:磁石になる性質をもつ物質が、その性質を失う温度。鉄では常圧の場合約770℃。

外核の温度は、マントルとの境界でもおよそ4,800℃とされています(カナダ天然資源省)。常圧のキュリー温度をはるかに超えているうえ、外核は非常な高圧下にあるため、永久磁石として地球磁場を説明することはできません。

もう一つの手がかりは、時間です。電流は、金属の電気抵抗で熱に変わりながら弱まっていきます。電流が弱まれば、その電流がつくる磁場も弱まります。カナダ天然資源省の見積もりでは、いまの地球の磁場は、作り直すしくみがなければ約1万5千年という時間スケールで減衰してしまいます。

ところが地球は、少なくとも30億年以上にわたって磁場を持ってきました。1万5千年で消えるはずの磁場が、数億年にわたって続いているわけです。地球の磁場は、もともとそこにあるものではなく、いまも作られ続けているものだと考えるのが自然です。

ダイナモ理論の仕組み|電磁誘導で磁場が生まれるしくみ

では、磁石を置けない高温の世界で、どうやって磁場が作られているのでしょうか。手がかりは、高校物理で学ぶ2つの法則です。

  • 電磁誘導の法則:磁場の中で電気を通す物質(導体)を動かすと、導体に電流が流れる現象。
  • アンペールの法則:電流が流れると、そのまわりに磁場ができる現象。

ダイナモ理論は、この2つの法則がひと続きの循環になるという考え方です。外核では、次のことが起きています。

  • 液体の鉄の対流:外核では、内側の熱が外へ逃げていく途中で、温まった鉄が上へ、冷えた鉄が下へと動きます。これが対流です。
  • 自転によるねじれ:地球は自転しているため、動く鉄にはコリオリの力がはたらきます。コリオリの力とは、回転するものの上で動く物体に、進む向きを横へ曲げるようにはたらく見かけの力です。この力で、鉄の流れはらせん状にねじれます。
  • 電流の発生:ごく弱い磁場が少しでもあれば、その中を導体である液体の鉄が動くことで、電磁誘導によって電流が流れます。
  • 磁場の強化:その電流が、アンペールの法則にしたがって新しい磁場をつくります。ねじれた流れは、磁力線(磁場の向きをつないだ線)を引き伸ばし、よじって、もとの磁場を強める形に組み直していきます。

強まった磁場の中を鉄が動けば、さらに電流が流れます。動く導体が、自分のつくった磁場の中で電流を生み、その電流がまた磁場をつくります。この循環をダイナモ作用と呼び、天体の磁場をダイナモ作用で説明する考え方がダイナモ理論です。

自転車のライトとの違い|磁石を自前でまかなう発電機

ダイナモ(dynamo)は、英語で発電機のことです。自転車のライトを灯す発電機も、ダイナモと呼ばれます。どちらも、電磁誘導で運動のエネルギーを電気に変える点は同じです。

違うのは、磁場の出どころです。自転車の発電機には永久磁石が入っていて、タイヤの回転で磁石とコイルの位置関係を変え、電流を取り出します。地球の外核には、その永久磁石がありません。使っている磁場は、自分が流した電流でつくったものです。自分で生み出した電流によって磁場を維持する発電機は、自励式(じれいしき)と呼ばれます。地球の外核は、惑星サイズの自励式の発電機といえます。

永久機関ではない理由|エネルギーの出どころとブレーキ

電流が磁場を生み、磁場が電流を生む。こう書くと、何もしなくても回り続ける永久機関のように見えるかもしれません。

ループを回しているのは、液体の鉄の流れがもつ運動のエネルギーです。磁場の中を流れる電流は、磁場から力を受けます(フレミングの左手の法則で向きが決まる力です)。電磁誘導で生まれた電流は、もとの変化を妨げる向きの磁場をつくります。流れがこの力に逆らって動く分だけ、運動のエネルギーが電気と磁気のエネルギーに移るのです。

失われた勢いを補っているのが、地球の内部から熱が逃げていく動きです。熱が対流を起こし、対流の運動が電流と磁場を生み、その一部は電気抵抗によって熱に戻ります。つまり磁場は、地球内部で起きている流体の運動エネルギーが、電気と磁気のエネルギーへ姿を変えたものと考えることができます。

同じ力は、磁場が増え続けるのも防いでいます。磁場が強くなるほど、流れを妨げる力も大きくなるからです。そのため磁場は、熱が流れを押す力と、磁場のブレーキがつり合うあたりで頭打ちになると考えられています。

地球ダイナモの規模|外核の厚さ・流れの速さ・磁場の強さ

この発電機の大きさを、数字で見てみましょう。

  • 外核の厚さ:約2,200km(地下約2,900km〜5,100km)
  • 外核の流れの速さ:ふつうの流れで年に十数km。速い帯でも年40km余り
  • 地表での磁場の強さ:約2万〜6万5千ナノテスラ(場所によって違う)
  • 作り直しがない場合に磁場が消えるまで:約1万5千年

テスラは、磁場の強さを表す磁束密度の単位で、ナノテスラはその10億分の1です。外核の流れは直接見えないため、磁場の変化から読み取ります。ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の人工衛星Swarm(スウォーム)の観測では、外核のなかに年40km以上で流れる帯が見つかりました。それでも、ふつうの流れの3倍ほどの速さだとされています。

年に十数kmを時速に直すと、1時間に1〜2mほどです。人が歩く速さの、数千分の1にすぎません。それでも、厚さ2,200kmの液体の金属がまとまって動くことで、地球全体を包む磁場が保たれています。

ダイナモ理論はどこで働く?|太陽と火星の比較

ダイナモ理論が説明するしくみは、地球だけのものではありません。ダイナモが働くには、おおまかに、電気を通す流体が動き、その運動エネルギーが磁場を維持できることが必要です。地球では、外核の対流に地球の自転が影響することで、磁場を維持しやすい流れがつくられています。

太陽|プラズマのダイナモ

太陽でも、電気を通すプラズマの流れによってダイナモが働いていると考えられています。対流や緯度によって自転速度が異なる差動回転などが磁場の増幅・再生に関わっています。ただし、太陽ダイナモが内部のどこで、どのように働いているかには、まだ研究途上の部分があります。

太陽内部の磁場のシミュレーション。銅色の線が磁力線で、太陽を帯のように取り巻いている。右のバーは黒点の数。
太陽内部の磁場のシミュレーション。銅色の線が磁力線で、太陽を帯のように取り巻いている。右のバーは黒点の数。
Image Credit: NASA/Goddard Space Flight Center Scientific Visualization Studio

黒点は、この磁場がとくに強く集まった場所です。黒点の磁場は、地球の磁場の約2,500倍にもなります(アメリカ国立気象局)。強い磁場が下からの熱の運び上げを妨げるため、黒点はまわりより温度が低く、暗く見えます。

太陽の磁場は、約11年ごとに北と南が入れ替わります(NASA)。地球でも磁極の逆転は起きますが、その間隔はばらつきが大きく、平均すると約30万年です。同じダイナモでも、材料の流体やかき混ぜ方が違えば、ふるまいは大きく変わります。

火星|液体のまま止まったダイナモ

火星も、かつてはダイナモが働いていたと考えられています。火星の地殻には、昔の磁場の向きを記録したまま固まった岩石が残っているからです。研究によると、火星全体を包む磁場は、約36億年前ごろまでに失われたとされています。

では、なぜ止まったのでしょうか。小さな火星は早く冷えて、核が固まってしまったからだと考えたくなるところです。

ところが、NASAの探査機InSight(インサイト)は火星の地震波をとらえ、火星の内部を調べました。その結果、火星の核は少なくとも外側が液体のままだとわかりました。2025年には同じデータから、中心に半径600kmほどの固体の内核があるという研究も発表されています。地球の外核にあたる液体の金属は、火星にもいまも残っているのです。

液体があるのに、ダイナモは止まっている。この食い違いが、ダイナモの条件をはっきりさせます。液体であることと、対流していることは別の話です。熱による対流が続くには、核から外へ、熱が十分な勢いで逃げ続ける必要があります。

止まった原因は、いまも研究が続いています。有力な考えの一つは、火星の核が熱を伝えやすく、熱が対流を起こさないまま逃げてしまったというものです。その結果、核の中がかき混ぜられにくい状態になり、対流が弱まった可能性が指摘されています。全球的な磁場を失った火星では、太陽風や太陽放射に大気がさらされやすくなりました。NASAのMAVENは、火星が過去に持っていた大気の大部分が宇宙へ失われたことを示しています。

逆に、火星より小さい水星では、弱いながらもダイナモがいまも働いていると考えられています。小さな水星でダイナモが止まらない理由は、別の記事にまとめました。

理解のまとめ

地球の磁場は、地下に埋まった磁石ではありませんでした。外核の温度はキュリー温度をはるかに超えていて、放っておけば磁場は約1万5千年で消えてしまいます。それでも磁場が続いているのは、液体の鉄が動き続け、電磁誘導とアンペールの法則のループを回しているからです。

星の磁場を支えている材料は、おおまかに次の3つです。

  • 電気を通す流体(地球では液体の鉄、太陽ではプラズマ)
  • 熱が外へ逃げることで起きる対流
  • 自転が流れに与えるねじれ

火星は、液体の金属が残っていても、対流が弱まれば発電が止まることを示しています。つまり星の磁場は、物として置かれているのではなく、熱が流れ続けることで保たれている状態なのです。

オーロラが極に近い夜空で揺れるのは、太陽からの粒子が地球の磁場に導かれるからです。その磁場は、足もと2,900kmより深いところで、今夜も作り直されています。

参考文献

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この記事を書いた人

夜空のしくみを物理からやさしく解説する天文メディア。執筆者の専門は電気化学で、国立天文台やNASAなどの資料を確かめながら書いています。

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