夜空に赤っぽい光を見つけて、あれは火星かと思ったことはありませんか。火星は、肉眼で見える惑星のなかでも、赤みが特にわかりやすい惑星です。明るさが大きく変わる火星を探すとき、この色はとても頼りになる手がかりになります。
ただし、火星には探しにくいところもあります。木星の見つけ方は、いちばん明るい星を探せば済みました。ところが火星は時期によって明るさが大きく変わるため、この方法が通用しません。暗い時期には、まわりの1等星にまぎれてしまうほどです。
この記事では、明るさに頼らず、色・黄道・動きの3つの手がかりで火星を見つける方法を紹介します。特定の日付に頼らない探し方なので、どの年にも使えます。あわせて、2026年秋から2027年春にかけての火星の見え方もまとめました。
難易度の目安:見頃の時期なら、街なかのベランダから肉眼で見つかります。見頃を外れると暗くなり、明け方や夕方の低い空に限られるため、少し難しくなります。

火星は明るさで探せない|2年2ヶ月で大きく変わる光
惑星が光って見えるのは、太陽の光を反射しているからです。そのため惑星の明るさは、地球からの距離に大きく左右されます。
火星は地球のすぐ外側を回る惑星です。地球と同じ側に並ぶときは約5,500万キロメートルまで近づき、太陽をはさんだ反対側にいるときは約4億キロメートルまで遠ざかります。距離の差は7倍あまり。木星や土星も地球との距離は変わりますが、もともと遠くにあるので、近いときと遠いときの差は2倍に届きません。
この距離の変化が、火星の明るさを大きく変える主な理由です。もちろん実際の明るさには、火星と太陽との距離や、太陽に照らされた面が地球からどのように見えるかも関係しますが、地球との距離が近いほど、火星は明るく見える傾向があります。
いちばん明るいときの火星はマイナス2.9等で、木星と肩を並べるほどの輝きです。いちばん暗いときは1.8等ほどまで落ち、1等星よりも暗くなります。明るさの差は、およそ80倍にもなります。
つまり、「いちばん明るい星を探す」という木星の方法は、火星には使えません。明るさだけでは時期によって判断が変わるので、代わりに頼りになるのが、色と、いる場所と、動き方の3つです。

火星を探すタイミング|2年2ヶ月ごとの衝
地球は火星より内側の軌道を、火星より速く回っています。そのため地球は、約780日(約2年2ヶ月)ごとに火星に追いつき、追い越します。追い越すとき、太陽・地球・火星がこの順に一直線に並びます。この位置関係が衝です。衝や合といった位置関係によって惑星の見え方は大きく変わります。

衝の前後は、火星が地球にいちばん近づく時期でもあります。明るく、しかも一晩中見えている時期です。夕方に東から昇り、真夜中に南の空高くへ達し、明け方に西へ沈みます。
この約780日という衝の間隔は、肉眼で見える惑星のなかでいちばん長いものです。木星の衝はおよそ13ヶ月ごと、土星はおよそ378日ごとに巡ってきます。火星だけがこれほど間があくのは、火星の公転が地球の半分ほどの速さで、それほど遅くないからです。陸上のトラックで、自分の半分ほどの速さで走る相手を1周抜くには、自分は2周あまり走らなければなりません。ほとんど止まっているような相手なら、1周と少しで追いつけます。火星は前者、木星や土星は後者にあたります。
2年2ヶ月のあいだに、火星の見え方は次のように移り変わります。
- 太陽と同じ方向にある時期(合):太陽の光にまぎれて見えません
- 明け方の東の空に現れる時期:まだ遠く、暗めです
- 衝の前後:一晩中見えて、いちばん明るくなります
- 夕方の西の空に残る時期:少しずつ暗くなり、やがて太陽に近づいて見えなくなります
見頃と呼べるのは、衝をはさんだ数ヶ月です。残りの1年以上は、暗かったり、夕方や明け方の低い空にしか見えなかったりする時期が続きます。探しに出る前に、いまが2年2ヶ月のどのあたりかを確かめておくと、空振りが減ります。国立天文台のウェブサイトで火星の接近を調べれば、次の衝の時期がわかります。
2026〜2027年の火星|いつ・どこに見える?
2026年秋から2027年春にかけては、ちょうど見頃にあたります。火星は2027年2月20日に地球へ最接近し、前後の明るさはマイナス1.3等に達します(国立天文台)。距離はおよそ1億キロメートルで、接近のなかでは遠いほうです。それでも、全天でいちばん明るい恒星シリウス(マイナス1.5等)に迫る明るさになります。
この期間、火星はずっとしし座のあたりにいます。
| 時期 | 見える時間と方角 | 明るさ |
|---|---|---|
| 10〜11月 | 真夜中前後に東から昇り、明け方には南東〜南の高い空 | 1.1等 → 0.5等 |
| 12月 | 真夜中ごろに東から昇り、明け方には南の高い空 | 0.5等 → -0.1等 |
| 1月 | 夜遅くに東から昇り、明け方には南西の空 | -0.2等 → -0.9等 |
| 2月 | 日の入りごろに東北東から昇り、真夜中には南の高い空 | -0.9等 → -1.3等 |
| 3月 | 宵の東〜南東の空から、夜遅くには南〜西の空へ | -1.2等 →-0.4等 |
| 4月 | 宵の南の高い空。夜遅くには西へ | -0.4等 →0.2等 |
| 5月 | 宵の南西の空 | 0.2等 → 0.7等 |
| 6月 | 日の入り後の南西〜西の空。次第に低くなる | 0.7等 → 1.0等 |
※時刻は東京での目安です。10月はかに座、11月以降はしし座にいます。
この冬は、ひとつ気をつけたいことがあります。しし座のあたりには、木星もいるのです。木星はこの冬マイナス2等台で、最接近のころの火星と比べても3倍ほど明るく輝きます。いちばん明るい星を探すと、火星ではなく木星に行き着きます。この冬は、木星と火星を見間違えないようにしましょう。2つは11月16日に1.2度まで近づき、2027年3月末にも4度ほどまで寄ります。11月の並びは、2026年11月の星空で紹介しています。

次の見頃は、2029年の春に巡ってきます。
火星の見つけ方|3ステップ
ステップ1:星座アプリで方角と高度を確認する
星座アプリ(「星座表」や「Star Walk」など)で「火星(Mars)」を検索すると、今どの方角のどの高さにいるかがすぐにわかります。国立天文台の「今日のほしぞら」でも確認できます。
ステップ2:黄道の近くで、赤い光を探す
方角の見当がついたら、次は黄道を思い浮かべます。黄道は、太陽が1年かけて星座のあいだを進んでいく道すじです。惑星はどれも、この黄道の近くに現れます。
理由は、太陽系の惑星がほぼ同じ平面の上を回っていることにあります。火星の軌道は、地球の軌道面から1.8度ほどしか傾いていません。そのため、地球から見た火星も、黄道から大きく離れることはなく、数度以内に収まります。
夜空に黄道の線は引かれていませんが、手がかりはあります。月も黄道から大きく離れずに空を渡るので、月やほかの惑星が見えていれば、それらを結んだ線がおおよその黄道になります。しし座やさそり座、おうし座など、黄道が通る星座を覚えておくのも近道です。
その線の近くで、赤みを帯びたオレンジ色の光を探してください。これが火星のいちばんの特徴です。この赤さは、火星表面の岩石や砂に含まれる鉄が酸化してできた、いわば「赤さび」の色です。
逆に言えば、黄道から大きく離れた赤い星は、火星ではありません。たとえばオリオン座のベテルギウスは赤い1等星ですが、黄道から約16度離れています。火星がそこまで黄道を外れることはないので、候補から外せます。

ステップ3:数日あけて、近くの星との位置関係を比べる
火星は、順行している時期には、星座の星に対して目で見てわかる速さで動いていきます。1日に約0.5度を目安にすると、満月1個分ほどです。多くの時期は、1週間で2〜4度ほど位置が変わります。腕をのばしたときの指1本の幅がおよそ1度なので、指2〜4本分にあたります。土星が1ヶ月で1度ほどしか動かないのと比べると、ずっと速い動きです。
近くにある明るい星をひとつ決めて、スマートフォンで同じ構図を1週間あけて2回撮ってみてください。恒星どうしの並びは変わらないので、位置を変えた赤い光があれば、それが火星です。
ただし衝をはさんだ時期には、動きが遅くなって止まって見えたり、向きが逆になったりします。このふしぎな動きについては、最後の「次の楽しみ方」で紹介します。
赤い1等星と見分ける|アンタレスとアルデバラン
黄道の近くには、火星とまぎらわしい赤い1等星が2つあります。夏の宵に南の低い空で光る、さそり座のアンタレス。冬の宵に高く昇る、おうし座のアルデバランです。アンタレスという名前は、ギリシャ語で火星に対抗するものを意味します。火星と赤さがよく似ていることから付いた名前です。2026年7月下旬には、明け方の東の空で火星がアルデバランのそばを通りました。
見分けるときは、次の3つを確かめます。
| 手がかり | 火星 | アンタレス・アルデバラン |
|---|---|---|
| 瞬き | 瞬きにくい | チカチカと瞬く |
| 位置 | 数日〜1週間で動く | 星座のなかで動かない |
| 明るさ | 時期によってマイナス2.9等〜1.8等 | ほぼ一定(アンタレスは1.0等前後、アルデバランは約0.85等) |
瞬きの違いは、光の広がりから来ています。惑星は見かけの大きさを持つため、大気のゆらぎが平均化され、恒星より瞬きにくく見えます。

ただし火星は、遠くにいて見かけの大きさが小さい時期や、地平線近くの低い空にいるときには、少し瞬いて見えることがあります。明るさで比べられるのも、見頃の火星だけです。暗い時期の火星は、この2つの星とほとんど同じ明るさになります。瞬きだけで決めずに、ステップ3の位置の変化もあわせて確かめると確実です。
観察の注意点
- 足元の安全を確認する:暗い場所で空ばかり見上げていると、段差や障害物につまずきやすくなります。明るいうちに周囲の様子を確認しておきましょう。
- 防寒対策をする:見頃が冬にあたる年は、真夜中から明け方の冷え込みが厳しくなります。2026〜27年の見頃も冬です。
- 車の通行に注意する:駐車場や道路脇で観察するときは、車から十分に離れた安全な場所を選んでください。
観察にあると助かるもの
見頃の火星は、肉眼だけで見つかります。そのうえで、観察を少し楽にしてくれるものを3つ挙げます。
双眼鏡
火星の色が見分けやすくなります。
目のなかで色を感じる細胞は、暗い光ではうまく働きません。暗い星ほど色がわかりにくいのはこのためです。双眼鏡は肉眼より多くの光を集めるので、火星の赤みも、隣に並ぶ星の白さも見分けやすくなります。明け方や夕方の低い空で、暗い時期の火星を薄明のなかから拾い出すときにも役立ちます。双眼鏡のどこを見て選べばよいかは、口径と倍率の関係から解説しています。
日の出が近い時間や日の入り直後に、東や西の低い空へ双眼鏡を向けるときは、太陽が地平線の下にあることを必ず確かめてから使ってください。双眼鏡で太陽を見ると、一瞬でも目を傷めるおそれがあります。
防寒具(秋冬)、または虫除け(夏)
ここは見頃の季節で入れ替える枠です。
火星の見頃は2年2ヶ月ごとに巡ってくるので、年によって季節が変わります。2026〜27年のように冬にあたる年は、防寒具が持ち物の筆頭になります。観察が途中で終わる理由は、飽きよりも寒さであることのほうが圧倒的に多いのが、私の経験則です。上着だけでなく、足元と手先、首もとまで用意してください。見頃が夏にあたる年は、虫除けを。刺されるたびに視線が空から外れ、位置を比べる構図も崩れてしまいます。
モバイルバッテリー
星図アプリで火星の高度を確かめたり、位置を比べるための写真を撮ったりしていると、明け方までにスマートフォンの電池は心もとなくなります。夜間の屋外で連絡手段を残しておく意味もあります。
私が持ち出しているのは、容量20000mAhでUSB-Cポートが2つあるタイプです。容量に余裕があると、星図アプリを開いたままにしても残量を気にせず空を見ていられます。ポートが2つあるのも、一緒に見に行った人の端末やカメラを同時につなげるので、夜が長いほど効いてきます。
次の楽しみ方|星座のなかを逆向きに進む火星を追う
火星を見つけられたら、次はその動きを追いかけてみましょう。ふだん火星は、星座のなかを西から東へ進んでいきます。ところが衝をはさんだ2ヶ月半ほどだけは、いったん止まって見えたあと、東から西へ逆向きに進みます。この動きを逆行と呼びます。
火星が本当に後戻りしているわけではありません。内側を速く回る地球が火星を追い越すとき、地球から見た火星が、はるか遠くの星座に対して後ろへ下がって見えるのです。高速道路で遅い車を追い越すとき、その車が遠くの山に対して後ろへ下がっていくように見えるのと同じしくみです。惑星がどのように太陽のまわりを回り続けているのかを知っておくと、この動きがさらに立体的に見えてきます。
2026〜27年の冬は、しし座の1等星レグルスが目印になります。火星は2026年秋から2027年春にかけて、レグルスのそばを3回通り過ぎます。
- 2026年11月26日ごろ:東へ進む火星が、レグルスの北1.7度ほどを通過
- 2027年1月12日ごろ:火星が止まって見える
- 2027年2月21日ごろ:逆向きに進む火星が、レグルスの北4度ほどを通過(最接近の翌日)
- 2027年4月3日ごろ:火星がふたたび止まって見える
- 2027年5月15日ごろ:東へ戻った火星が、レグルスの北1.2度ほどを通過
2〜3週間おきに、火星とレグルスが一緒に入る写真を撮っておくと、半年かけて行って戻る火星の足あとが残ります。赤い火星と青白いレグルスの色の違いも、並ぶといっそうはっきりします。
明るさは2年2ヶ月ごとに大きく変わっても、黄道の近くにいること、赤いこと、星座のあいだを進んでいくことは変わりません。見頃がいつ巡ってきても、同じ手順で火星は探せます。
今夜、黄道のあたりに赤い光をひとつ見つけたら、1週間後にもう一度、同じ場所を見上げてみてください。

参考文献
- 国立天文台(NAOJ)|火星の接近
- 国立天文台(NAOJ)|ほしぞら情報2027年
- 国立天文台(NAOJ)|今日のほしぞら
- NASA|Mars Fact Sheet
- NASA/JPL|Horizons System