梅雨が明け、夜風に混じる湿り気が夏の訪れを告げる7月。 7月の夜空は、春の星座が西へ傾き、夏の星座が頭上へ昇る、季節の移り変わりをもっとも感じられる時期です。さらに今年は、夕方の金星と、明け方の火星・土星が見やすく、惑星観察にも適した1ヶ月となっています。
特に注目したいのは、未明の東の空で繰り広げられる、赤い惑星と赤い恒星の競演です。特別な道具は必要ありません。今夜、少しだけ夜更かし(あるいは早起き)をして、宇宙の動きを体感してみませんか。
2026年7月の星空の見どころ

今月の見どころは、夕暮れの金星と、明け方の火星・土星の動きです。
7月中旬:夕暮れの西の空に輝く「金星」
日が沈んだ直後の低い空、一番に輝き始めるのが金星です。明るさはマイナス4.1等から4.3等と、街明かりの中でも簡単に見つけることができます。

7月下旬:明け方の「火星」と「アルデバラン」の接近
未明の東の低い空では、火星がおうし座の1等星アルデバランに接近します。どちらも「赤く見える」天体ですが、火星は惑星、アルデバランは自ら光る恒星。その光り方の違いにも注目です。


7月31日:みずがめ座δ流星群が極大
深夜から未明にかけて、みずがめ座δ(デルタ)南流星群がピークを迎えます。今年は満月直前で月が明るいため、条件は決して良くありませんが、月の反対側をぼんやり眺めると、鋭い光が走るかもしれません。
火星とアルデバランはなぜ赤い?
火星とアルデバラン。この2つの天体を見て「どちらも赤いな」と感じたら、それは宇宙の異なる「構造」を同時に目撃していることになります。
火星が赤いのは「錆び」のせい
火星が赤く見える物理的な理由は、その表面を覆う「酸化鉄」、つまり錆びた砂にあります。火星はかつて水や大気が豊かだったと考えられていますが、現在は乾燥し、鉄分が酸化した赤い大地が太陽光を反射して私たちの目に届いています。

アルデバランが赤いのは「寿命」のサイン
対して、恒星であるアルデバランが赤いのは、表面温度が低い(約3,900K)ためです。これは星が年老いて膨らみ、「赤色巨星」へと進化している証拠。火星の赤が「地表の物質」によるものなら、アルデバランの赤は「星の進化のステージ」を示しているのです。

7月の星空の見つけ方
金星を見つける方法(夕方)
- 時間: 日の入りから30分〜1時間後がベスト。
- 方角: 西の低い空。
- 探し方: 建物に隠れやすいので、できるだけ視界が開けた場所を選びましょう。

火星とアルデバランを見つける方法(未明)
- 時間: 日の出前の2時間ほど前。
- 方角: 東の空。
- 探し方: 2つの赤い星が並んでいます。明るさは近く、色や瞬き方を比べてみましょう
夏の大三角を見つける方法(夜21時頃)
- 時間:21時ごろ
- 方角: 東から頭上にかけて。
- 探し方: 最も明るい「ベガ」、その右下の「アルタイル」、左下の「デネブ」を繋いで、巨大な三角形を探してください。これが夏の星座たちの道標になります。この三角形の間には夏の天の川が流れています。
星空観察の注意点
- 「留(りゅう)」の瞬間を感じる 7月28日、土星が「留」を迎えます。これは地球から見て土星の動きが止まったように見える現象です。実際には土星は動き続けていますが、地球との追い抜き追い越しの関係でそう見えます。宇宙の「速度差」を感じてみてください。地球が内側の軌道を速く動いているため、外側の惑星である土星を追い抜く瞬間に、空の中で一時的に動きが止まったように見えます。
- 月明かりを味方につける 月末は満月(29日)に近く、流星群の観測には不向きですが、月明かりに照らされた雲を眺めるのも、この時期ならではの情緒です。
- 足元の安全 暗い場所での移動は、足元に十分注意しましょう。ベランダで観察する場合も、手すりから身を乗り出すことのないようにしてください。

7月の観測に用意しておきたいもの
7月の観察は、一晩のうちに三度に分かれます。日の入り直後の西の低空で金星を見つけ、21時ごろに頭上の夏の大三角をたどり、日の出2時間前の東の低空で火星とアルデバランを見比べる。ずっと空の下にいるというより、時間を空けて何度も外に出直す月です。そのたびに姿勢を楽に作れるか、暗さに慣れた目を保てるかが、どこまで見られるかを分けます。
折りたためる断熱シート、またはリクライニングできるアウトドアチェア
真上を見上げ続けるとき、最初に限界がくるのは首です。
21時の夏の大三角は、東から頭上へと昇っていきます。寝転がるか、背もたれを倒して座るかできれば、視界を広く保ったまま空にとどまれます。未明の火星まで粘るつもりなら、途中で体を休められる場所があるかどうかが、そのまま観察できる時間になります。
私が使っているのは、畳むと小さくなる断熱シートです。7月のように一晩で何度も出直す夜は、敷いて畳んでをそのつど繰り返すので、かさばらないことがそのまま効いてきます。
双眼鏡
未明の東の空には、火星とアルデバランという2つの赤い天体が並びます。
並んでいること自体は肉眼でもわかりますが、どちらの赤が濃いか、どちらが瞬いているかまで見分けようとすると、低空に残る薄明かりに邪魔されます。倍率の低い双眼鏡でその高さをゆっくりなぞると、色と光り方の違いを掴みやすくなります。
これは日の出前の観察です。双眼鏡を空に向けるのは、太陽が地平線の下にあることを確かめてからにしてください。誤って太陽を視野に入れると、重い眼の損傷につながります。
赤色ライト
2つの赤い星を見比べる観察は、空と手元を何度も往復します。
星図やスマートフォンを見るたびに白い光を浴びると、そのつど暗さに慣れた目が元に戻り、次に見上げたときに見える星の数が減ります。赤い光は暗順応を壊しにくい性質があり、観察を中断せずに手元だけを照らせます。仕組みは天体観測で赤いライトを使う理由で解説しています。
私が選んだのは、赤色でしか点灯しないタイプです。往復の回数が多い夜ほど、点けるたびに白色になっていないかを確かめずに済むことが効いてきます。
虫除け
梅雨が明けた7月の夜は、屋外に数時間とどまれば蚊が寄ってきます。
ベランダでも、網戸を開けたままなら同じです。刺されるたびに腕を振り、痒みに気を取られると、作りかけた姿勢も目の状態も切れてしまいます。快適さのためというより、観察を続けるための道具です。
モバイルバッテリー
夕方の金星から未明の火星まで、7月の一晩は長く伸びます。
その間、星図アプリで方角や高度を確かめたり、見えた時刻を記録したりしていると、明け方までにスマートフォンの電池は心もとなくなります。夜間に屋外で過ごすなら、連絡手段を残しておく意味もあります。
私が持ち出しているのは、容量20000mAhのものです。残量に余裕があると、画面を閉じるタイミングを電池ではなく自分の観察の都合で決められます。夕方に一度使い、そのまま未明まで持ち歩く夜には、その余裕がそのまま効いてきます。
7月31日のみずがめ座δ南流星群を狙う場合も、必要なものは変わりません。今年は月が明るいため、月を背にして空の広い範囲を眺められる姿勢を作れるかどうかが、そのまま見える数につながります。


今夜、ベランダに出て東の空を眺めてみてください。 そこにある赤い光が、数億キロ先の「錆びた大地」なのか、それとも数十光年先の「巨大な老いた太陽」なのか。その正体を知るだけで、ただの点だった星々が、立体的な「宇宙の構造」として見えてくるはずです。
6月の星空情報、8月の星空情報も参考になります。


参考文献