北極星の見つけ方|北斗七星とカシオペア座を使った「夜空のコンパス」

夜空を見上げたとき、どっちが北だろうと迷ったことはありませんか。

スマートフォンのコンパスを開けば、方角はすぐにわかります。でも、星の並びだけを手がかりに北を見つけられたら、夜空の見え方は少し変わります。

その目印になるのが、北極星です。

今回は、北斗七星とカシオペア座を使って、北極星を見つける方法を紹介します。特別な道具は必要ありません。北の空が見える場所なら、ベランダからでも試せます。

さらに、北極星を見つけたあとに1〜2時間待ってもう一度空を見ると、星が北極星のまわりを動いていることも確かめられます。

難易度の目安:北の空が見える場所なら、街なかのベランダからでも肉眼で見つかります。季節によって目印にする星の並びが変わるので、その使い分けまで覚えておくと、一年中どの季節でも探せます。

目次

北極星はなぜ「動かない星」に見える?

北極星と聞くと、夜空でいちばん明るい星を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実際の北極星は2等星で、夜空ではそれほど目立つ明るさではありません。それでも、街明かりのある場所でも条件がよければ肉眼で十分に見つかります。

では、なぜこれほど有名なのでしょうか。理由は、北極星が一晩じゅうほとんど位置を変えないことにあります。ほかの星が東から昇って西へ沈んでいくあいだも、北極星は北の空のほぼ同じ場所にとどまっています。

見える方角は、ほぼ真北です。高さは、その土地の緯度とほぼ同じになります。東京や大阪なら約35度、札幌なら約43度、那覇なら約26度。腕をまっすぐ伸ばして握りこぶしを作ると、こぶし1つ分がおよそ10度にあたります。東京や大阪なら、北の地平線からこぶし3つ半ほど上が目安です。

高さが緯度とそろうのには、理由があります。北極点に立てば北極星は真上に、赤道なら地平線の上に見えるはずです。そのあいだでは、北へ緯度が1度進むごとに、北極星も約1度ずつ高くなっていきます。

なぜ北極星だけが動かないのか?

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Image Credit: NASA/JPL-Caltech

北極星だけが、宇宙のなかで特別な動きをしているわけではありません。理由は、私たちが住む地球の側にあります。

地球はコマのように、1日に1回まわっています(自転)。この回転の軸を北極の側へまっすぐ伸ばしていくと、夜空の一点に届きます。この点を天の北極と呼びます。そして、たまたまそのすぐ近くにあるのが北極星です。

開いた傘をくるくる回したとき、骨の先は大きな円を描くのに、中心の軸の先だけはほとんど動きません。夜空でも同じことが起きています。地球の回転軸の延長線上にある天の北極のそばの星は、私たちの目にはほとんど止まって見えるのです。

正確にいえば、北極星は天の北極から約0.6度ずれています。満月の見かけの直径(約0.5度)より少し大きいくらいの距離です。そのため北極星も、天の北極のまわりに小さな円を描いています。ただ、この動きを肉眼で見て取るのは難しく、北の方角を知る目印としては十分な近さです。

北極星が天の北極のそばにあるのは、今の時代だけの巡り合わせでもあります。地球の自転軸は、回るコマの首振りのように、約2万6000年かけてゆっくり向きを変えています。これを歳差と呼びます。軸の向きが変われば、天の北極の位置も星空のなかを移っていきます。約1万2千年後には、こと座のベガが天の北極の近くにやってきます。

今夜できる、北極星の探し方

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控えめな明るさの北極星を、あてずっぽうで見つけるのは難しいものです。そこで、見つけやすい星の並びをコンパス代わりに使います。目印は、北斗七星とカシオペア座の2つです。

まずは北の方角と高さの見当をつける

北の方角がわからないときは、夕日が沈んだ方角を思い出してください。そちらを向いたとき、右手の側がおおよそ北です。そのうえで、先ほどの高さ(東京や大阪なら地平線からこぶし3つ半ほど)のあたりを意識しておくと、次の手順で線を伸ばした先を確かめやすくなります。

北斗七星から探す(春から夏の宵)

北斗七星は、おおぐま座の腰から尾にあたる7つの星の並びです。7つのうち6つが2等星前後の明るさなので、街なかでもひしゃくの形をたどれます。

  1. 北の空で、ひしゃくの形をした北斗七星を探します。
  2. ひしゃくの水をすくう部分の先端にある、2つの星を見つけます。
  3. 2つの星を結んだ線を、ひしゃくの口が開いている側へ伸ばします。長さは、2つの星の間隔の約5倍です。

伸ばした先のあたりで、ぽつんと光っている2等星が北極星です。

上の図では、線が斜め下へ伸びています。これは、図に描かれた時刻での向きです。北斗七星は北極星のまわりを回っているので、線が上を向く時刻も、横や下を向く時刻もあります。上下ではなく、ひしゃくの口の向きで覚えておくと迷いません。

カシオペア座から探す(秋から冬の宵)

北斗七星が北の地平線近くまで下がって見えにくい時期は、カシオペア座を使います。カシオペア座は、アルファベットのWの形に並ぶ5つの星が目印の星座です。時刻によってはMの形に見えます。2〜3等星の並びで北斗七星より少し暗めなので、街明かりが強い場所では、片方の端の星が見えにくいこともあります。

  1. 北の空で、WまたはMの形をした星の並びを探します。
  2. Wの両端の辺(端の星と、その隣の星を結んだ線)を、それぞれとがった先の側へ伸ばし、2本が交わる点を見つけます。
  3. その交点から、Wの真ん中の星へ線を引きます。
  4. その線を真ん中の星の先へ、交点から真ん中の星までの約5倍の長さだけ伸ばします。

やはりその先に、北極星が待っています。

どちらを使う?北極星をはさんで向かい合う2つの目印

北斗七星とカシオペア座は、北極星をはさんで反対側にあります。どちらも北極星を中心に回っているので、片方が高い空にある時期は、もう片方が低い空にあります。季節ごとの使い分けは、この位置関係から決まっているのです。

夜8時半ごろの目安は次のとおりです(北緯35度、本州のなかほどで計算)。

季節北斗七星カシオペア座使う目印
春(3〜5月)北東〜北の高い空北の低い空北斗七星
夏(6〜8月)北西の空北〜北東の低い空北斗七星
秋(9〜11月)北の地平線近く北東の高い空カシオペア座
冬(12〜2月)北東の低い空北西の高い空カシオペア座

8月と2月は、2つの高さがほぼ同じになり、どちらでも使えます。両方が見える時期なら、2本の線が同じ星に届くかどうかで答え合わせもできます。

表は夜8時半ごろの目安です。夜が更けるほど、表の季節が先へ進んだ並びになります。2時間遅く見れば、ほぼ1か月先の並びです。また、北へ行くほど2つの目印はどちらも高くなり、南へ行くほど低くなります。沖縄のあたりでは、秋の宵の北斗七星や初夏の宵のカシオペア座が、地平線の下に沈む時期があります。

この手順は、ベランダでも、見慣れない観測地でも同じように使えます。私も観測地では、よくこの手順で北極星を探します。地上に方角の手がかりが少ない場所でも、北極星がわかれば北が決まり、ほかの星座を探すときの基準になります。

観察するときの小さな注意点

  • ベランダでは身を乗り出さない:北の低い空をのぞこうとして、手すりから身を乗り出さないようにしてください。目印が低くて見えない時期は、表で高い側にあるもう一方の目印に切り替えれば十分です。
  • 暗い場所では足元を確かめる:空ばかり見上げていると、段差や障害物につまずきやすくなります。明るいうちに周囲の様子を確認しておきましょう。
  • 明るい画面を見続けない:北極星は2等星なので、目が暗さに慣れきる前でも見つかります。ただ、ひしゃくやWの形をたどるには、暗さに慣れた目のほうが有利です。目が暗さに慣れる(暗順応)には20〜30分ほどかかり、途中でスマートフォンの明るい画面を見ると、慣れた分の多くが元に戻ってしまいます。

観察にあると助かるもの

北極星探しは、肉眼だけで完結します。そのうえで、あると観察が少し楽になるものを1つだけ挙げます。

赤色ライト

白いライトを一度使うと、せっかく暗さに慣らした目がそこで元に戻ってしまいます。

足元や星図を確かめるたびに、それが起きます。赤い光は暗順応を壊しにくい性質があり、観察を中断せずに手元だけを照らせます。しくみは赤い光が暗順応を壊しにくい理由で解説しています。

使っているもの

私が選んだのは、赤色でしか点灯しないタイプでした。白色との切り替えがないぶん、暗闇で手探りにスイッチを押しても白い光が飛び出しません。何度も手元を照らす夜ほど、この一点が効いてきます。

次の挑戦:星の時間を体感しよう

北極星が見つかったら、1時間後か2時間後に、もう一度同じ場所から北の空を見上げてみてください。

北斗七星やカシオペア座が、北極星を中心に円を描くように位置を変えているはずです。北を向いて見ると、回る向きは反時計回り。北極星を中心にした角度で1時間に約15度進むので、2時間で約30度、時計の文字盤でいえば数字1つ分です。1日たつと、ほぼ一周してもとの位置に戻ってきます。

ほとんど止まっている北極星と、そのまわりを回っていく星々。この違いを見ているとき、私たちは地球の自転を自分の目で確かめていることになります。

今夜、晴れ間が見えたら、北の空を見上げて、星の並びから線を伸ばしてみてください。自分の目で線をたどって見つけた北極星は、この先どこの夜空でも、北を教えてくれる目印になります。

参考文献

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この記事を書いた人

夜空のしくみを物理からやさしく解説する天文メディア。執筆者の専門は電気化学で、国立天文台やNASAなどの資料を確かめながら書いています。

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