2026年9月の星空|金星の最大光度と、中秋の名月が満月ではない理由

9月の夜空は、8月よりも長い時間をかけて眺められるようになります。日の入りが早まり、夜空を見られる時間がこれから少しずつ長くなっていくからです。

そのかわり、ペルセウス座流星群のように多くの流星が期待できる大きな流星群はありません。目玉となる流星群のない、静かな1か月です。ただし9月には、興味深い事象が2つ並びます。

ひとつは19日。夕方の西の空で、金星が最大光度を迎えます。先月8月15日に、金星は太陽から最も離れる東方最大離角を通過したばかりでした。最も離れた日と、最も明るい日は一致しません。

もうひとつは25日の中秋の名月。この夜の月は、満月ではありません。天文学的な満月は2日後の27日です。しかも、これほど大きくずれるのは珍しいことなのです。

どちらも、日付だけを覚えれば「そういう日らしい」で終わります。理由まで降りていくと、夜空の見え方が幾何学で決まっていることが見えてきます。

2026年9月の星空
Image Credit: NAOJ
目次

2026年9月の星空カレンダー

今月のスケジュールを一覧にします。

  • 9月7日: 未明の東の空で、月が火星に並ぶ
  • 9月9日: 月が木星に0.46度まで接近(午前2時頃)
  • 9月11日: 新月 / 天王星が留
  • 9月14日: 日の入り後の西の低空で、細い月が金星に接近
  • 9月19日: 金星が最大光度(マイナス4.8等) / 上弦
  • 9月23日: 秋分の日
  • 9月25日: 中秋の名月
  • 9月26日: 海王星が衝
  • 9月27日: 満月(01時49分) / 月が土星に最も近づく

見どころが夕方・深夜・未明の3つに散っているので、早寝の人にも夜更かしする人にも、空を見るチャンスがあります。

金星の最大光度|9月19日、最も離れた日ではない

夕暮れの西の空で、ひときわ明るい星がひとつだけ先に光り始めます。宵の明星、金星です。

見える時間と方角

  • 時間: 日の入り後30分から1時間ほど
  • 方角: 西の低空
  • 明るさ: マイナス4.6等からマイナス4.8等

見つけるのに星図は要りません。街明かりのあるベランダからでも、西の空で最初に目に入る光がそれです。ただし下旬になると高度が下がり、建物や山の陰に入りやすくなります。狙うなら上旬から中旬のほうが確実でしょう。

最大光度のころの金星は、澄んだ空であれば、昼間の青空のなかにも肉眼で見つけられるほどの明るさになります。

「離れているほど明るい」ではない理由

先月、金星は太陽から最も離れる東方最大離角を8月15日に迎えました。素直に考えれば、太陽から最も離れて、空の暗いところに出てきた日がいちばん明るいはずです。ところが金星が最大光度になるのは、その1か月あまり後の9月19日でした。なぜでしょうか。

金星の明るさを決めているのは、2つの量です。

  • 太陽に照らされている面が、どれだけこちらを向いているか(満ち欠け)
  • 金星そのものが、どれだけ大きく見えているか(視直径)

金星は地球より内側の軌道を回っています。そのため地球に近づくほど大きく見えますが、同時に、太陽に照らされた面はこちらから見えにくくなっていきます。この2つは必ず逆を向きます。近づけば大きくなり、大きくなるほど細くなる。金星の明るさは、この相反の結果です。

最大離角のころ、金星は半分だけ光る半月形をしていました。そこから内合に向かって地球に近づくにつれ、照らされた面の割合は4分の1程度まで減っていきます。一方で視直径は、太陽の向こう側にいた外合のころの4倍近くまで膨らみます。

ここで効いてくるのが、面積は直径の2乗で増えるという関係です。直径が2倍になれば、面積は4倍。だから照らされた割合が2分の1から4分の1へ減っても、そのあいだに金星そのものの見かけの大きさが十分に増えれば、地球に届く光の総量はむしろ増えていきます。

そして、この増加はいつまでも続きません。さらに近づけば、今度は欠けの進み方のほうが勝ち、金星は暗くなっていきます。増える側と減る側が入れ替わる、その一点が最大光度です。だから最大光度は、最大離角と内合のあいだにただ一度だけ現れます。

金星は、このあと10月24日に内合を迎えて太陽の手前へ回り込みます。9月に見えている輝きは、その手前の頂点にあたります。

9月14日、細い月と金星が並ぶ夜

19日の5日前、日の入り後の西の低空で、細い月が金星に近づきます。

どちらも欠けている天体です。月は目で見て欠けがわかりますが、金星は肉眼では点にしか見えません。それでも同じ夕空に並ぶ2つは、どちらも太陽の光を反射しているだけの球体で、こちらを向いた面がどれだけ照らされているかで形が決まっています。望遠鏡を持っている方は、この時期の金星を覗いてみてください。三日月を思わせる、細く欠けた姿をしています。

中秋の名月が満月ではない理由|9月25日と9月27日

9月25日は中秋の名月です。そして今年、この夜の月は満月ではありません。

太陰太陽暦の15日目と、天文学的な「望」

中秋の名月とは、太陰太陽暦の8月15日の夜に見える月のことです。日付で決まる、暦の行事です。

太陰太陽暦では、新月(朔)の瞬間を含む日が、その月の1日になります。2026年は9月11日が新月ですから、この日が8月1日。そこから数えて15日目が、9月25日というわけです。

一方、天文学的な満月(望)は日付ではありません。地球から見て、月が太陽とちょうど正反対の方向に来た瞬間を指します。2026年のその瞬間は、9月27日01時49分です。

つまり、片方は日を数えており、もう片方は瞬間を指しています。そもそも基準が違うのです。

なぜずれるのか

ずれる理由は2つあります。

ひとつは、朔の瞬間が1日のどこに来るかが決まっていないこと。朝に朔を迎えた月と、夜遅くに朔を迎えた月とでは、同じ15日目でも実際に経過した時間が半日以上変わります。

もうひとつは、朔から望までにかかる日数そのものが一定ではないことです。月の公転軌道は真円ではなく楕円で、地球に近いところでは速く、遠いところではゆっくり進みます。さらに、朔から望までにかかる時間そのものも毎回同じではありません。月の軌道が真円ではなく、進む速さが変わるためです。15日目の夜がちょうど望と重なるほうが、むしろ偶然なのです。

2日ずれるのは珍しい

1日のずれはしばしば起こります。ところが2日のずれは、そう多くありません。前回は2017年、次に日付が2日ずれるのは2043年です。

つまり9月25日の月は、まだわずかに満ちきっていない状態で昇ってきます。欠けているから残念、という話ではありません。名月は暦が決めた日で、望は天体の位置が決めた瞬間。今年は、その2つの物差しの違いが2日ぶんの幅として目に見える、という年です。

9月25日から29日、月のそばの土星

名月の夜から数日間、20時頃に月を見上げると、その近くに0.4等の星がひとつ寄り添っています。土星です。27日に最も近づきます。

ただし、正直なところ条件はよくありません。27日は満月ですから、月のすぐそばは月明かりに洗われて、0.4等の土星は目立ちにくくなります。土星そのものをじっくり見たいなら、月がまだ細い上旬から中旬の深夜を選ぶほうが有利です。この時期の土星はうお座からくじら座の領域を逆行しており、真夜中には南東から南の空に昇ってきます。

土星が逆行しているのは、地球が内側から追い抜いている最中だからです。追い抜きの正面にあたる衝は、10月4日。9月は、その見ごろに入っていく助走のような段階にあたります。

未明の東|火星と木星、9月9日の0.46度

夕方と深夜の見どころを追ったら、最後は明け方です。日の出前の東の空に、2つの惑星が昇ってきています。

  • 木星: マイナス1.8等からマイナス1.9等。かに座からしし座へ順行。東の低空でひときわ明るく光ります
  • 火星: 1.2等から1.1等。ふたご座からかに座へ順行。木星よりやや高いところ、ふたご座のカストルとポルックスの近くに、赤っぽい光として見つかります

この2つに、9月上旬は月が寄っていきます。7日には火星と月が並び、9日には月が木星に接近します。

注目は9日の接近の近さです。最も近づく午前2時頃、月と木星の間隔は0.46度。満月の見かけの直径がおよそ0.5度ですから、月1個ぶんよりも狭い間隔ということになります。腕をいっぱいに伸ばしたときの小指の幅が、だいたい1度。その半分の距離に、月と太陽系最大の惑星が並びます。

ただし、東京では月の出が2時50分頃です。地平線から昇ってくるころには、2つの間隔はもう少し開いています。最接近の瞬間そのものは、日本からは地平線の下で進行しているとお考えください。

秋分を過ぎると、観測できる時間が増える

9月23日は秋分の日です。この日、太陽は空を1年かけて一周する道の上を進んで、天の赤道と交わる点(秋分点)を通過します。

太陽がこの交点にいるあいだ、地球のどこでも昼と夜の長さがほぼ等しくなります。そしてこの日を境に、日の入りは早まり、日の出は遅くなっていきます。空が暗い時間が、日ごとに伸びていくということです。

星を見る側から言えば、これは観察できる時間そのものが増えるという意味になります。9月は、その入口の月です。

同じ週の26日には、海王星が衝を迎えます。衝とは、地球から見て太陽と正反対の方向に来ることで、その天体が一晩中空に見え、地球にも近くなるため、観察条件がよくなる時期です。つまり海王星にとっては、1年でいちばん条件のよい日にあたります。

それでも、海王星の明るさは7.8等です。肉眼で見える限界はおよそ6等ですから、条件が最良の日ですら、目では届きません。双眼鏡でも周囲の星と見分けるのは難しく、小型望遠鏡と星図が必要になります。一番よく見える日に見えない。太陽系の外側の距離感は、そういう形で伝わってきます。

9月の観測に用意しておきたいもの

9月の観察は、空の3か所に分かれます。日の入り後の西の低空で金星、夜半の南で月と土星、そして日の出前の東の低空で火星と木星。しかも23日の秋分を境に夜が長くなり、待っている時間そのものが伸びていきます。夏のように暑いから外にいられる月ではなく、下旬の明け方には空気が冷え始めます。姿勢を保つ道具と、体温を奪われない備えが効いてくる月です。

リクライニングできるアウトドアチェア、または折りたためる断熱シート

9月は、待つ時間が長くなる月です。

未明の火星と木星まで狙うなら、日付が変わってから空が白むまで、外にとどまることになります。夏のあいだは日中の熱が残っていたコンクリートも、下旬になると逆に体温を奪う側へ回ります。座る場所と体のあいだに一枚あるかどうかが、そのまま粘れる時間の差になります。

使っているもの

私が使っているのは、畳めば小さくなる断熱シートです。アルミの面で地面と体のあいだを断つつくりで、夏は日中の熱がコンクリートに残っていても、それが体に伝わりにくいのが助かりました。オールシーズン向けなので、これから冷えていく地面にも同じ一枚を出せます。

双眼鏡

今月は、接近が3回あります。

7日の月と火星、9日の月と木星、14日の月と金星です。とくに9日は0.46度まで近づき、満月の見かけの直径よりも狭い間隔になります。肉眼でも2つは別々に見分けられますが、双眼鏡の視野は5度から7度ほどあるので、接近した2天体をひとつの円のなかにまとめて収められます。離れたものを引き寄せて見るというより、どれだけ近いのかを1枚の絵として確かめる使い方です。

一方、19日の金星は双眼鏡ではまだ点に近いままです。細く欠けた形まで見分けるには、望遠鏡の倍率が要ります。

安全のために

金星を狙うのは日の入り後、火星と木星を狙うのは日の出前です。どちらも太陽が地平線の下にあることを確かめてから、双眼鏡を空へ向けてください。とくに未明の観察は、待っているうちに薄明が進みます。空が明るくなってきたら双眼鏡は下ろしてください。誤って太陽を視野に入れると、重い眼の損傷につながります。

赤色ライト

白いライトを一度使うと、せっかく暗さに慣らした目がそこで元に戻ってしまいます。

足元や星図を確かめるたびに、それが起きます。赤い光は暗順応を壊しにくい性質があり、観察を中断せずに手元だけを照らせます。仕組みは赤い光が暗順応を壊しにくい理由で解説しています。

使っているもの

私が選んだのは、赤色でしか点灯しないタイプでした。白色との切り替えがないぶん、暗闇で手探りにスイッチを押しても白い光が飛び出しません。何度も手元を照らす夜ほど、この一点が効いてきます。

虫除け

屋外に数時間とどまる観察です。刺されるたびに視線が空から外れ、腕を振ったその一瞬に見逃しが起きます。快適さのためというより、観察の姿勢を保つための道具です。ベランダでも、網戸を開けて数時間じっとしていれば蚊は寄ってきます。

モバイルバッテリー

星図アプリで惑星の高度を確かめたり、観察の記録を残したりしていると、明け方までにスマートフォンの電池は心もとなくなります。夜間の屋外で連絡手段を残しておく意味もあります。

使っているもの

私が持ち出しているのは、容量20000mAhでUSB-Cポートが2つあるタイプです。容量に余裕があると、星図アプリを開いたままにしても残量を気にせず空を見ていられます。ポートが2つあるのも、一緒に見に行った人の端末やカメラを同時につなげるので、夜が長いほど効いてきます。

防寒具は挙げていません。9月の平地なら、まだ羽織るもの一枚で足ります。ただし下旬に未明まで粘る場合や、山間部・高原へ足を延ばす場合は、一枚多めに持っていってください。夜が長くなるということは、体が冷える時間も長くなるということです。

見え方を決めているのは、どこから見ているか

今月の2つの現象は、結局のところ同じことを言っています。

9月19日の金星が最も明るいのは、地球から遠く離れているからではありません。細く欠けながら、それでも近づいているからです。9月25日の月が満月でないのは、月の運行が乱れているからでもありません。暦が日を数える道具であり、望が瞬間を指す言葉だからです。

夜空で見えている明るさや形は、その天体そのものの性質だけでは決まりません。私たちがどこから、どの角度で見ているのか。それが必ず入り込んでいます。

秋分を過ぎれば、暗い時間は日ごとに伸びていきます。西の空の金星が沈むまでの時間も、東の空が白むまでの時間も、これから少しずつ長くなっていくのです。

今夜、窓を開けて西を見てください。夕暮れに最初に光り出すあの一点は、いま、細い三日月の形をしています。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空研究室」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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