デネブとは?|夏の大三角の超巨星が「距離を測れない」理由と、星までの距離のしくみ

夏の夜空、天の川のほとりで輝く夏の大三角。その一角、はくちょう座のしっぽに位置するのがデネブです。ベガアルタイルと並ぶこの星は、実は3つのなかで飛び抜けて遠く、そして飛び抜けて明るい星です。

ところが、その「どれくらい遠いのか」が、はっきりわかっていません。デネブまでの距離は、いまだに大きな幅を持って議論されています。なぜ、これほど明るい一等星の距離が測れないのでしょうか。そこには、星までの距離を測るという天文学の根本的な難しさが隠れています。

デネブの解説図(等級、温度)

目次

デネブとは?|夏の大三角の白い超巨星

デネブは、はくちょう座のα星です。見かけの等級は約1.25等で、全天では19番目に明るい恒星です。表面温度は約8500度で、青みがかった白色に輝きます。名前の由来はアラビア語で「めんどりの尾」。はくちょう座の尾の位置にあることにちなみます。

デネブは「白色超巨星」に分類される、極端に大きく明るい星です。同じ夏の大三角のベガ(約25光年)やアルタイル(約17光年)が近くの星であるのに対し、デネブははるか遠くにあります。それでも一等星として同じくらいに見えるのは、この星がとてつもなく明るいからです。

問題は、その「はるか遠く」が、正確にはどれくらいなのかということです。


星までの距離は、どう測るのか|年周視差というものさし

星までの距離を測る最も基本的な方法は、「年周視差」です。

地球は1年かけて太陽のまわりを回っています。そのため、半年違う時期に同じ星を見ると、地球の位置が変わるぶん、近くの星は遠くの星に対してほんのわずかに位置がずれて見えます。指を立てて片目ずつで見ると、指が背景に対してずれて見えるのと同じ原理です。このずれの大きさから、三角測量の要領で星までの距離を計算できます。これが年周視差です。

この方法には弱点があります。星が遠いほど、位置のずれは小さくなり、やがて測定できないほど微小になってしまうのです。近くの星なら正確に測れますが、遠い星ほど誤差が大きくなります。デネブほど遠い星になると、この方法だけでは十分な精度で距離を決めることが難しくなります。


なぜデネブは「測れない」のか|距離が決まらないと明るさも決まらない

デネブの年周視差は、あまりに小さく、精密な観測をもってしても誤差が大きくなります。その結果、デネブまでの距離の見積もりは、およそ1400光年から2600光年まで、研究によって大きく開きがあります。一等星のなかでも、距離の見積もりに大きな幅が残る代表的な星です。

距離がわからないと、困ったことが起きます。星の「本当の明るさ」が決められないのです。私たちが目にするのは「見かけの明るさ」だけで、これは距離しだいで変わります。同じ見かけの明るさでも、遠くにあるなら、それだけ本当は明るいことになります。デネブの距離が1400光年なのか2600光年なのかで、その本当の明るさは太陽の数万倍とも十数万倍とも変わってしまいます。

そこで天文学者は、別の手がかりを使います。星の光を分解して得られるスペクトルには、その星が超巨星なのか、ふつうの星なのかといった情報が刻まれています。スペクトルの型と、星の明るさや温度の関係を整理した「HR図」という地図に照らすことで、その星の本当の明るさをおおよそ推定できます。

HR図は、多くの恒星について「表面温度」と「本当の明るさ」の関係をまとめた図です。デネブのスペクトルから表面温度や超巨星であることがわかれば、HR図を手がかりに本来の明るさを推定できます。

本当の明るさと見かけの明るさを比べれば、逆に距離を割り出すことができます。年周視差が使えないほど遠い星では、こうした方法で距離が見積もられています。デネブの距離の幅は、まさにこの推定の難しさそのものなのです。


今夜、測りきれない星を見上げる

夏から秋(7月から10月ごろ)の宵、天頂近くで輝く夏の大三角を探してみてください。3つの星のうち、天の川のなかにあり、十字の形をしたはくちょう座の尾にあたるのがデネブです。ベガやアルタイルより少し暗く見えますが、それは遠いからにすぎません。

ベガは約25光年、アルタイルは約17光年。それに対してデネブは、少なくとも1400光年以上。同じ三角形に並んで見えても、デネブだけが桁違いに遠く、桁違いに明るい星です。しかもその距離は、いまも正確にはわかっていません。夜空で同じくらいに見える3つの星が、実はまるで違う奥行きを持っている。そう知って見上げると、夏の大三角が立体的に見えてくるはずです。


まとめ

デネブははくちょう座の青色超巨星で、夏の大三角の一角をなします。見かけはベガやアルタイルと同じ一等星として並びますが、実際には少なくとも1400光年以上と桁違いに遠く、その距離はいまも1400〜2600光年の幅で議論されています。

近い星は年周視差で正確に距離を測れますが、デネブは遠すぎてこの方法の限界を超えています。距離が決まらないと本当の明るさも決まらないため、スペクトルとHR図を使った推定に頼らざるをえません。デネブの距離の幅は、星までの距離を測ることの難しさそのものを映しています。

今夜、夏の大三角を見上げたら、いちばん奥にある測りきれない星の遠さを想像してみてください。


参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空研究室」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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