金星の雨とは?|地表に届かない「硫酸の雨」のしくみ

夜空でひときわ明るく輝く「宵の明星」「明けの明星」、金星。一等星のシリウスよりもずっと明るく、慣れると日中の青空でも肉眼で見つけられることがあります。

これほど明るいのは、金星が分厚い雲にすっぽり覆われているからです。太陽の光をよく反射するその雲の正体は、実は「硫酸」でできています。そして金星では、この硫酸の雲から雨が降っているのに、その雨は一度も地面に届いたことがありません。今日はそのしくみを見ていきましょう。

金星表面のイメージ図
Image Credit: NASA’s Scientific Visualization Studio
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金星がまぶしい理由は「雲の反射率」

金星の雲がどれくらい光を反射するかを示す数値(アルベド)は、約75%にのぼります。地球の雲を含めた反射率が約30%、月の地表が約10%であることと比べると、金星の雲がいかによく光を跳ね返しているかがわかります。夜空で金星が一番星と呼ばれるほど明るいのは、この分厚い雲が太陽光の鏡になっているためです。

雲の正体は「濃硫酸」

地球の雲は水や氷の粒でできていますが、金星の雲は違います。金星の雲を作っているのは、濃硫酸の細かい粒です。金星の上空45〜70km付近に、この硫酸の雲が厚い層を作っています。

この雲の中では液滴が成長し、実際に硫酸の雨として落ち始めます。実際、金星の上空では硫酸の雨が観測されています。ただし、その雨が地表に届くことはありません。

金星の雨が地表に届かない理由

金星の地表温度は約460℃です。雲から落ち始めた硫酸の雨粒は、高度が下がるにつれて周囲の気温がどんどん上がっていくため、地表に到達するはるか手前、高度25〜40km付近で完全に蒸発してしまいます。蒸発した成分は上昇気流に乗って再び上空へ運ばれ、冷えて硫酸の雲となり、また雨として落ち始める——この繰り返しです。

気象学では、雲から降り始めても地面に届かずに蒸発してしまう雨を「尾流雲(びりゅううん、virga)」と呼びます。地球でも乾燥した砂漠の上空などで見られる現象ですが、金星ではこの尾流雲が惑星規模で、しかも硫酸という成分で起きているのです。

今夜、金星を見上げると

金星の輝きは、地表に一度も届かない雨を降らせ続ける、厚い雲によって作られています。今夜、西や東の空にひときわ明るい光を見つけたら、その眩しさの正体が、灼熱の地表の手前で消えていく硫酸の雨だということを思い出してみてください。同じ「輝く星」でも、その中身は星ごとにまったく違う顔を持っているのです。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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