金星に磁場が“戻る”日は来る? 眠れる森の美女が目覚める条件

地球は、方位磁針が北を指し、オーロラが輝くほど強い磁場を持つ惑星です。この磁場は、太陽から吹きつける「太陽風」という高速の荷電粒子から、大気や生命を守るバリアの役割を果たしています。

金星
Image Credit: NASA/JPL

大きさも質量も地球に近い金星には、この地球のような磁場(固有磁場)がほとんど存在しません。ただし、金星が太陽風に対して完全に無防備というわけでもありません。この記事では、金星に磁場が生まれない理由と、そのかわりに金星の周りに存在する別の仕組みを見ていきます。

目次

金星に磁場がない理由 ダイナモ作用の3条件

惑星が固有の磁場を持つには、内部で「ダイナモ作用」と呼ばれる発電の仕組みが働く必要があります。ダイナモ作用が起きるには、次の3つの条件がそろわなければなりません。

  1. 電気を通す液体金属のコア
  2. 一定以上の自転
  3. コア内部での対流

地球のコアは液体の鉄でできており、自転し、対流もしています。この3条件がそろうことで、地球は強い磁場を維持できています。

金星は「液体」はあるが「対流」がない

金星のコアは、少なくとも外核が液体である可能性が高いことが、重力場や自転の観測から示されています。自転は1日およそ243日と非常にゆっくりですが、水星のように自転が遅くても磁場を持つ惑星があることから、自転の遅さだけが原因とは考えにくいとされています。

現在もっとも有力視されているのは、コア内部の対流が十分に維持されていないという説明です。金星には地球のようなプレートテクトニクスが存在した証拠は見つかっておらず、内部の熱を効率よく外へ逃がす仕組みを欠いています。その結果、コアの内側と外側の温度差が小さくなり、対流を起こす力が弱まっていると考えられています。液体という条件は満たしていても、それをかき混ぜる対流が十分ではないため、ダイナモ作用は維持できないと考えられています。

そのかわりに生まれる「誘導磁気圏」

固有の磁場を持たない金星ですが、周囲に磁場がまったくないわけではありません。金星の上層大気(電離層)に、太陽風そのものが磁場を作り出しているのです。

太陽風には、太陽の磁場の一部が電気を通す粒子の流れとともに運ばれています。この太陽風が金星の電離層にぶつかると、電磁誘導という物理法則にしたがって、電離層の中に電流が発生します。この電流が新たな磁場を作り出し、太陽風の侵入を押しとどめる働きをします。これを「誘導磁気圏」と呼びます。

誘導磁気圏は、地球の磁場のように惑星の奥深くから生まれるものではなく、太陽風が当たっている間だけ、大気の表面近くに一時的に作られるバリアです。地球の磁場に比べると弱く、範囲も限られているため、太陽風の一部は防ぎきれず、金星の大気を少しずつ宇宙へ引き剥がしていると考えられています。

だから何がわかったか

金星に磁場がないのは、コアが液体ではないからではなく、対流という「かき混ぜる動き」が足りないためだと考えられています。そして金星は、固有の磁場のかわりに、太陽風自身がその場で作り出す誘導磁気圏という、地球とはまったく異なる仕組みで宇宙線と向き合っています。金星の空にオーロラが輝かないのは、守るバリアの「作られ方」そのものが、地球と根本的に違うからなのです。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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