冬の夜、オリオン座の左上でひときわ赤く輝く星があります。ベテルギウスです。青白いリゲルとは対照的な、燃えるようなオレンジ色。この色は、この星がすでに一生の終盤に差しかかっていることを示しています。
ベテルギウスは「超新星爆発」を控えた星として知られます。ただし、それが「いつ」なのかを正しく理解するには、この星の内部で何が起きているのかを知る必要があります。


ベテルギウスとは?|オリオン座の赤い超巨星
ベテルギウスは、オリオン座のα星です。明るさは時期によって変わりますが、おおむね0.5等前後で、全天でも指折りの明るい星のひとつです。地球からの距離はおよそ500〜700光年と見積もられていますが、あまりに大きく複雑な星のため、距離には今も無視できない不確かさが残っています。
この星の最大の特徴は、その大きさです。大きさは太陽のおよそ700倍以上(距離の不確かさにより、この値にも幅があります)。もし太陽の位置に置けば、火星の軌道を飲み込むほどの巨大さです。表面温度は約3500度と低く、それがベテルギウスの赤い色の理由です。
ベテルギウスは「赤色超巨星」に分類されます。この赤くて巨大な姿こそ、大質量星が最期に近づいたときの典型的なサインです。

なぜこれほど膨らんだのか|燃料切れが近い星
ベテルギウスがこれほど巨大なのは、この星が中心での水素の核融合を終えつつあるからです。
星は中心で水素を核融合させている間、重力と内部の圧力がつり合って安定した大きさを保ちます。しかし中心の水素が尽きると、この均衡が崩れ、外層が大きく膨張します。中心では、水素の次にヘリウム、その先の炭素や酸素など、より重い元素へと核融合が進んでいると考えられています。
膨張して表面が引き伸ばされると、温度は下がります。それが赤い色です。つまりベテルギウスの赤さは「冷たさ」ではなく、「大きく膨らんだ結果、表面温度が下がっている」ことのしるしなのです。
ベテルギウスはまた、明るさが数百日から数年の周期でゆらぐ変光星でもあります。表面が大きく脈打ち、ときにガスや塵を放出しているためです。星の外層が不安定に揺れていること自体が、最終段階に近い大質量星の特徴です。

「超新星爆発を控えている」とはどういう意味か
ベテルギウスほど重い星は、中心でより重い元素へと核融合を進め、最後は鉄の中心核を作ります。鉄からはもうエネルギーを取り出せないため、中心核は自らの重力を支えきれず、一気につぶれます。このとき起きるのが超新星爆発です。
ベテルギウスは、この結末に向かう最終段階にあると考えられています。ただし「控えている」という言葉には注意が必要です。天文学でいう「近い将来」は、人間の時間感覚とはまるで違います。ベテルギウスが爆発するのは、今夜かもしれないし、10万年ほど先かもしれません。私たちには、その正確なタイミングを知る手立てがまだないのです。
もし爆発すれば、ベテルギウスは昼間でも見えるほど明るく輝き、数週間から数ヶ月をかけて暗くなっていきます。距離が十分に遠いため、地球の生命に危険はありません。人類は、オリオン座の肩の星が最期を迎える瞬間を、安全な特等席から眺めることになります。

今夜、赤い肩の星を見上げる

冬(12月から3月ごろ)の宵、南の空のオリオン座で、三ツ星の左上にある赤い星がベテルギウスです。右下の青白いリゲルと見比べると、その色の違い——つまり温度の違いがよくわかります。
その赤い光は、火星軌道ほどにも膨れ上がった星の、脈打つ表面から届いています。中心では鉄へと向かう核融合が進み、いつか訪れる超新星爆発へのカウントダウンが刻まれています。その「いつか」が今夜なのか10万年後なのかは誰にもわかりません。だからこそ、今夜も赤く輝くその星を、一度は見上げておく価値があります。
まとめ
ベテルギウスはオリオン座の赤色超巨星で、直径は太陽の約700倍以上、表面温度は約3500度。赤い色は、大きく膨張して表面温度が下がった結果であり、大質量星が最期に近づいたサインです。
中心では鉄へと向かう核融合が進み、いずれ超新星爆発を迎えます。ただしそれは今夜から10万年先までの幅を持つ「近い将来」であり、正確な時期はまだわかっていません。
今夜オリオン座の赤い肩の星を見上げたら、その色が「星の最期の段階」そのものを映していることを思い出してみてください。
参考文献