オリンポス火山とは?|動かない大地と弱い重力が積み上げた太陽系最大の山

夜空で赤く光る星を見つけたことはありますか。それは太陽系の惑星、火星かもしれません。

望遠鏡をのぞいても、見えるのは小さな赤い円ばかり。ところが、その表面には地球の常識では届かない高さの山がそびえています。

太陽系でいちばん高い火山、オリンポス火山(オリンポス山)。ふもとから山頂までの高さは、エベレストのおよそ2.5倍以上あります。

不思議だと思いませんか。火星は地球より小さな惑星です。それなのに、なぜ地球ではなく火星のほうに、これほど巨大な山ができたのでしょうか。

火星にあるオリンポス山
Image Credit: NASA/Goddard Space Flight Center
Scientific Visualization Studio
目次

オリンポス火山とは? 太陽系でいちばん高い、火星の巨大火山

まず、その規格外の大きさから見ていきます。

地球の最高峰エベレストの標高は約8,848メートル。オリンポス火山の高さは、火星の基準面(地球でいう海面にあたる、高さの物差しのゼロ点)から測って約22キロメートルです。エベレストの約2.5倍。旅客機が飛ぶ高さが約10キロメートルですから、その倍以上の高さがある計算になります。

なお、この山にはもう一つの測り方があります。ふもとに広がる平原から山頂までの高さで測ると、最大で約26キロメートル。エベレスト3つ分に近い数字です。エベレストの3倍と紹介されることがあるのは、こちらの測り方によります。どこをゼロとするかで、山の高さは変わるのです。

ただ、もっと驚かされるのは高さより広さかもしれません。

裾野の広がりは、直径にすると約600キロメートル。単純に円として考えると約28万平方キロメートルで、日本の国土の7割ほどに相当します。

高さ22キロに対して、裾野の広がりは約600キロもあります。

日本の富士山は、高さ3,776メートルに対して、基底の直径が約50キロメートル。それと比べると、オリンポス火山は高さが約6倍なのに、裾野は約12倍も広がっています。

つまり、オリンポス火山は「とても高い山」というだけではありません。高さ以上に横へ大きく広がった、非常になだらかな火山なのです。

なぜ火星にだけ、これほど巨大な山ができたのか

理由は二つあります。火星の地面が動かなかったこと。そして、火星の重力が弱いことです。順番に見ていきましょう。

理由① 地面が動かないから、同じ場所に積み上がる

地球の表面は、プレートと呼ばれる何枚もの岩盤に分かれていて、ベルトコンベアのように少しずつ動いています(プレートテクトニクス)。

ここで、回転寿司を思い浮かべてください。

地下深くでマグマを送り出し続ける場所(ホットスポット)が寿司職人、その上をすべっていく地面がレーンです。職人が同じ位置で握り続けても、レーンが動くので、皿は次々と流れていってしまいます。その結果できるのが、ハワイ諸島のような火山の列。一つひとつはほどほどの大きさで、代わりに数が並びます。

一方の火星には、このレーンの動きがありません。地面はマグマの出口の真上に止まったままです。同じ皿の上に、何千万年、何億年と寿司が載り続けたらどうなるでしょうか。答えは山積みです。

火星の大地が動かなかったこと。これが一つ目の理由になります。

理由② 重力が弱いから、自分の重さで潰れない

もう一つの理由は、火星が地球より身軽なことにあります。

山は、高くなるほど自分自身の重さで地面にめり込み、崩れようとします。地球の重力は強いので、ある高さを超えると山自身の重さがブレーキになってしまうのです。

けれど、火星の重力は地球の約38パーセントしかありません。同じ量の岩を積んでも、地面が受け止める荷重は3分の1強で済みます。低重力によって、大規模な火山体が自重で変形・崩壊しにくくなるため、ここまで成長できました。また、火星の重力が弱いため、マグマが地表に達してつくった火山体も、地球より大きく成長しやすかったと考えられています。

高く押し上げられる理由と、崩れずに残る理由。二つがそろっていたのが火星でした。

巨大な火山は、火星の惑星進化を物語っている

ここで少し、見方を変えてみます。

プレートが動かないということは、火星の内部が地球とは違う状態になっていることを意味します。

惑星は一般に、小さいほど内部の熱を失いやすい性質があります。火星の半径は約3,390キロメートルで、地球の約半分。そのため、火星は地球よりも早く内部の熱を失ってきました。その結果、地球のようにプレートを動かし続ける仕組みは発達せず、火星の表面は長いあいだ、比較的動きにくい状態にあります。オリンポス火山が巨大になった背景には、この「動かない大地」がありました。

オリンポス火山が巨大なのは、火星が地球より活発だったからではありません。火山活動が長く続く一方で、地表が移動しなかったため、噴き出した溶岩が同じ場所に積み重なっていったのです。

大地が動かない星で、それでも地面が揺れることはあるのか。その話はプレートのない惑星で起きる地震の記事で扱っています。

まとめ:動く大地のほうが、めずらしい

  • 地面が動かないから、マグマが一箇所に積み上がった
  • 重力が弱いから、積み上げても崩れなかった

そう考えると、足元でときどき起きる地震や、噴煙を上げる火山が、少し違って見えてきませんか。あれは地球の内部がまだ熱く、大地を動かし続けている証拠です。

動かない大地の上では、火山は一つの場所に成長し続けることができます。一方、地球ではプレートが動き、大地そのものが常に姿を変えています。同じ岩石惑星でも、惑星の大きさや内部の熱、地表の動き方が違えば、そこに刻まれる風景は大きく変わるのです。火星がどんな惑星なのかは、赤い惑星そのものの成り立ちからも読めます。

夜空で赤い星を見つけたら、その小さな点の向こう側を思い浮かべてみてください。日本の7割を覆うほどの裾野を広げた山が、動かない大地の上に、今夜も静かに立っています。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空研究室」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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