スピカとは?|おとめ座の青白い星が「近接連星」で潮汐変形する理由と、分光で見抜くしくみ

春から初夏の夜、南の空に青白く澄んだ光を放つ一等星があります。おとめ座のスピカです。「真珠星」とも呼ばれる清らかな輝きで、春の夜空を代表する星のひとつです。

穏やかで上品なこの星ですが、その正体はかなり激しいものです。スピカは、2つの高温の星がたがいのすぐそばを4日で一周する「近接連星」で、たがいの重力で引き伸ばされ、球ではない形にゆがんでいます。肉眼ではひとつに見えるその光は、たがいを変形させ合う2つの星の姿なのです。

スピカの解説図(等級、温度)

目次

スピカとは?|おとめ座の青白い一等星

スピカは、おとめ座のα星です。見かけの等級はおよそ1.0等で、全天では16番目に明るい恒星です。地球からの距離はおよそ250光年。青白い色は、表面温度が非常に高いことを示しています。主星の表面温度はおよそ2万5000度。太陽の約6000度と比べると、4倍を超える高温です。

スピカは、春の夜空を見つける目印としても知られます。北斗七星の柄のカーブをたどってオレンジ色のアークトゥルスへ、さらに延ばした先にある青白い星がスピカです。この曲線を「春の大曲線」と呼びます。

清らかな一点に見えるスピカですが、その内部では、2つの星が想像を超える近さで回り合っています。


4日で一周|スピカは近接連星

スピカは連星です。2つの高温の星が、共通の重心のまわりを回り合っています。驚くべきはその近さと速さです。2つの星は、たがいのまわりをわずか約4日で一周しています。

これは、2つの星の間隔が極端に狭いことを意味します。その距離は、太陽と水星の間隔よりもずっと近いほどです。これほど近い連星を「近接連星」と呼びます。あまりに近いため、通常の望遠鏡では2つを点として分けて見ることはできません。

では、どうやって連星だとわかるのか。ここで登場するのが「分光」という手法です。


光を分けて見抜く|分光連星というしくみ

星の光をプリズムのように波長ごとに分解すると、そこには「スペクトル」と呼ばれる縞模様が現れます。この縞の位置は、星がこちらへ近づくと青いほうへ、遠ざかると赤いほうへ、わずかにずれます。音源が近づくと音が高く、遠ざかると低く聞こえるのと同じ原理です。

近接連星では、2つの星が回り合いながら、片方が近づくとき、もう片方は遠ざかります。そのため、スペクトルの縞が周期的に左右へ動いて見えます。このわずかな動きを読み解くことで、点にしか見えない光の奥に2つの星があること、そしてその公転周期までがわかるのです。こうしてスペクトルから正体を見抜かれた連星を「分光連星」と呼びます。


引き伸ばされる星|潮汐変形と明るさの変化

2つの星がこれほど近いと、もうひとつの現象が起きます。潮汐変形です。

近くにある天体は、相手に「潮汐力」を及ぼします。潮汐力とは、天体の手前側と奥側で重力の強さに差が生じることで、相手を引き伸ばそうとする力のことです。地球の海が月に引かれて満ち引きするのと同じ力が、スピカの2つの星の間でははるかに強くはたらきます。

その結果、スピカの星は完全な球ではなく、相手の方向へ引き伸ばされたラグビーボールのような形にゆがんでいます。この変形した星が回り合うと、地球から見える表面の面積が周期的に変わり、明るさもわずかに増減します。こうした星を「楕円体変光星」と呼びます。スピカのかすかな明るさの変化は、2つの星がたがいを引き伸ばし合っている証拠なのです。


今夜、真珠星を見上げる

春から初夏(4月から6月ごろ)の宵、北斗七星の柄のカーブをアークトゥルスへ、さらに延ばした先に青白いスピカが見つかります。まわりに明るい星が少ないぶん、その澄んだ光はいっそう際立ちます。

肉眼では、スピカはまぎれもなくひとつの清らかな点です。けれどその奥では、2つの高温の星が4日で回り合い、たがいの潮汐力でラグビーボールのようにゆがみながら、明るさをかすかに脈打たせています。真珠のような一点が、実は引き伸ばし合う2つの星だと知ると、春の夜空の見え方が少し変わるはずです。


まとめ

スピカはおとめ座の青白い一等星で、主星の表面温度はおよそ2万5000度に達します。その正体は、2つの高温の星が約4日周期で回り合う近接連星です。近すぎて分けて見えないため、光を分解する「分光」によって連星だと見抜かれています。

2つの星は潮汐力でたがいを引き伸ばし、ラグビーボールのようにゆがんでいます。この変形が、スピカのかすかな明るさの変化を生んでいます。

今夜、春の大曲線の先に真珠星を見つけたら、その清らかな光の奥で引き伸ばし合う2つの星を思い浮かべてみてください。


参考文献

  • Tkachenko, A. et al. (2016). Stellar modelling of Spica, a high-mass spectroscopic binary with a β Cep variable primary component. MNRAS, 458, 1964.
  • Harrington, D. et al. (2016). Alpha Virginis: line-profile variations and orbital elements. A&A, 590, A54.
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この記事を書いた人

「深夜の星空研究室」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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