地球の中心には、固体の内核と、その周囲を取り巻く液体の外核があります。このコアの動きが地球の磁場を生み出しています。では、大きさも質量も地球に近い金星のコアは、いったいどんな状態にあるのでしょうか。
金星には探査機を着陸させて内部を直接調べる手段がまだなく、コアの状態は長く推測の域にとどまっていました。この記事では、地球からの観測によって少しずつ見えてきた、金星のコアの姿を紹介します。

直接見えないコアを、どう調べるのか
惑星の中心は、掘り進んで確認することができません。そこで使われるのが、惑星全体の「自転のふるまい」を精密に測る方法です。
惑星の内部で、重い金属のコアと軽い岩石のマントルがどう分布しているかによって、自転軸のわずかな首振り(章動)や自転速度の変化のしかたが変わります。これは、フィギュアスケートの選手が腕の位置を変えると回転速度が変わるのと同じ原理です。地球からレーダー電波を金星表面に当て、跳ね返ってくる電波のわずかな変化を追跡することで、金星の自転のクセを読み取り、そこから内部構造を逆算することができます。
観測から見えてきた「液体の外核」

2021年に発表された研究では、地上の電波望遠鏡を使って金星の自転を長期間にわたって精密に追跡した結果がまとめられました。その結果、金星の自転のふるまいは、コアの少なくとも外側部分が液体である場合の予測とよく一致することがわかりました。
これは、金星のコアが地球と同じように「固体の内核」と「液体の外核」に分かれている可能性を示すものです。金星のコアが完全に凍りついた金属の塊ではなく、今も溶けた金属を抱えていると考えられる、大きな手がかりとなりました。

液体なのに、磁場が生まれない謎
ここで新しい疑問が浮かびます。地球の磁場は、液体の金属コアが対流し、自転と組み合わさることで生まれています(ダイナモ作用)。もし金星のコアも液体なら、なぜ金星には地球のような磁場がないのでしょうか。
有力な説の一つは、金星のコアが「対流していない」というものです。液体であることと、対流していることは別の条件です。コアの熱がうまく外へ逃げず、内側と外側の温度差が小さいままだと、液体であっても大きな対流は起きません。この磁場が生まれない理由については、別記事で詳しく取り上げます。


だから何がわかったか
金星のコアは、地上からのレーダー観測によって、少なくとも外側が液体の金属でできている可能性が高いことがわかってきました。金星のコアは「冷え切って止まった心臓」ではなく、「溶けてはいるが、対流という動きを欠いた心臓」に近い状態だと考えられます。地表からは決して見えないコアの姿も、電波を使った精密な観測によって、少しずつ明らかになりつつあるのです。

参考文献
- NASA|Venus
- Margot, J-L. et al., “Spin state and moment of inertia of Venus”, Nature Astronomy (2021)