金星の地表にかかる気圧は、約92気圧です。地球でいえば、水深900〜1000mの深海とほぼ同じ圧力にあたります。大気の96.5%は二酸化炭素(CO₂)、残りのほとんどが窒素で占められています。
金星は、大きさも重力も地球の約0.9倍とよく似た惑星です。それなのに、まとっている大気の量は地球の約90倍。この記事では、金星の大気がなぜこれほど重くなったのかを、「炭素がどこにあるか」という視点から見ていきます。

火山ガスが供給源になる

金星の大気に含まれる大量の二酸化炭素は、主に火山活動によって供給されたと考えられています。火山はマグマとともに、内部に閉じ込められていたガスを噴き出します。この点は地球も同じで、太古の地球でも火山活動によって二酸化炭素が大気に加えられてきました。
つまり、二酸化炭素を「供給する」側の仕組みは、地球と金星でそれほど変わりません。違うのは、供給されたあとの「行き場」です。
地球は炭素を岩石に戻している
地球の大気中の二酸化炭素が90気圧分にまで積み上がらないのは、供給された炭素を絶えず地中に戻す仕組みがあるからです。
大気中の二酸化炭素は雨に溶けて海に取り込まれ、カルシウムなどと結びついて炭酸塩岩という岩石になります。この岩石はプレートテクトニクス(地球表面を覆う岩盤がゆっくり動く仕組み)によって、海底からマントルへと沈み込んでいきます。二酸化炭素は「空気」ではなく「岩石」として、地球内部に大量に貯蔵されているのです。実際、地球の岩石に閉じ込められている炭素をすべて大気中に解放すれば、地球の大気も金星と同程度の重さになると見積もられています。

金星ではリサイクルが止まっている
金星にはこの炭素のリサイクル機構がほとんど働いていないと考えられています。金星は高温のため水を失い、地殻が乾燥して硬くなったことなどから、地球のような持続的なプレートテクトニクスは現在ほとんど働いていないと考えられています。

硫酸の雨はできますが、高温の下層大気で蒸発してしまうため、二酸化炭素を洗い流して岩石に固定する経路も働きません。火山活動によって供給された二酸化炭素が十分に回収されないまま残り続け、回収する仕組みがないまま、二酸化炭素は数十億年かけて大気中に積み上がっていきました。これが、金星の大気が92気圧にまで重くなった理由です。

だから何がわかったか
金星の大気の重さは、惑星の重力の強さで決まったものではありません。金星の重力はむしろ地球よりわずかに弱いほどです。決めているのは、炭素を「大気」に置くか「岩石」に置くかという、惑星内部の物質循環の違いです。地球の大気が薄く保たれているのは、地下で絶えず炭素を回収し続ける仕組みが働いているからだとわかります。

参考文献