星は昔から、明るさで呼び分けられてきました。1等星、2等星、3等星。明るさは、星の名札のようなものです。一度決まれば変わらないもの。そう思われがちです。
ところが、秋の夜空の南に広がるくじら座には、この名札が当てにならない星があります。およそ11か月ごとに肉眼で見えるほど明るくなり、やがて肉眼ではまったく見えないほど暗くなっていく星です。17世紀の天文学者は、この星をミラと名づけました。ラテン語で、驚くべきもの、という意味です。
明るさが一定しない星は、ミラだけではありません。そして、その仲間のなかには、宇宙の距離を測る物差しとして使われてきた星がいます。明るさが当てにならないはずの星が、なぜ物差しになるのでしょうか。

変光星とは|明るさが時間とともに変わる星
夜空の星は、どれもちらちらとまたたいて見えます。けれど、このまたたきを変光星とは呼びません。星の光が地球の大気を通り抜けるとき、空気のゆらぎに揺さぶられて起きるものだからです。星そのものの明るさは、何も変わっていません。
変光星とは、星の側の理由で、明るさが時間とともに変わる星のことです。
星の側の理由には、いくつかの種類があります。ここでは代表的な2つを見てみましょう。星の見え方が変わる場合と、星そのものが変わる場合です。
見え方が変わる星|2つの星が隠し合う
秋から冬の夜空、ペルセウス座にアルゴルという2等星があります。この星は約2日21時間ごとに、明るさがおよそ3分の1まで落ちます。暗くなりはじめてから元に戻るまでは、10時間ほどです。
アルゴルの正体は、2つの星がたがいのまわりを回る連星です。地球からは、2つの星が回る面を、ほぼ真横に近い向きから見ています。そのため、暗いほうの星が明るいほうの星の前を横切るたびに、光がさえぎられます。月が太陽を隠す日食と同じことが、星どうしのあいだで起きているのです。

このとき、それぞれの星が出している光の量は変わっていません。変わったのは、地球からの見え方だけ。
おとめ座のスピカのように、引き伸ばされた星どうしが回り合うことで、明るさがかすかに揺れる例もあります。
星そのものが変わる星|膨らみ、縮む
もう一方は、星そのものが明るさを変えるものです。冒頭のミラがその代表で、年老いて大きく膨らんだ赤い星が、約332日の周期で膨らんだり縮んだりしています。星の大きさや表面の温度が変わるのにつれて、見える明るさも変わります。明るいときと暗いときの差は、ときに1000倍を超えるほどです。
オリオン座のベテルギウスも、数百日から数年の周期で明るさがゆらいでいる変光星です。
こうした、星そのものが脈打つ変光星のなかに、とりわけ規則正しいグループがあります。
セファイド変光星|時計のように正確に脈打つ星
秋の宵、北の空の高いところに、五角形に星が並んだケフェウス座が見えます。家の形にたとえられる星座です。その五角形の角の近くで、ζ(ゼータ)星、ε(イプシロン)星と小さな三角形を作っている4等星があります。ケフェウス座のδ(デルタ)星です。
この星は、約5日9時間の周期で、明るさを2倍ほど変えています。明るくなるときは速く、暗くなるときはゆっくりと。1784年に明るさの変化が見つかってから240年あまり、ほぼ同じリズムで脈打ち続けています。
セファイド変光星とは、星の外側の層が膨張と収縮をくり返し、明るさが周期的に変わる脈動変光星です。なかでも古典的セファイドは、数日から数十日の周期で変光する明るい星で、脈動する周期と本当の明るさの間に決まった関係があります。
名前は、このケフェウス座δ星に由来します。ケフェウス(Cepheus)の英語での読みから、セファイド(Cepheid)と呼ばれるようになりました。
実は、もっとなじみのある星もこの仲間です。北極星は約4日の周期で脈打つセファイド変光星で、地球にいちばん近いセファイド変光星でもあります。ただし明るさの変化はごくわずかで、肉眼で気づくことはできません。
では、なぜ星が脈打つのでしょうか。星はふつう、外へ押し広げようとする内部の圧力と、内へ引き込もうとする重力がつり合って、一定の大きさを保っています。
セファイド変光星では、このつり合いの位置を中心に、星の外側の層が行ったり来たりしています。
揺れを支えているのは、外側の層にある、熱をためては逃がす弁のような働きです。層が押し縮められると、ガスが光を通しにくくなり、中から来る熱がこもって層が押し上げられます。押し上げられて薄くなると、今度は光が通りやすくなって熱が逃げ、層は重力に引き戻されます。
これがくり返されることで、星は脈打ち続けるのです。
周期がわかれば、本当の明るさがわかる|周期-光度関係
セファイド変光星が特別なのは、正確に脈打つからだけではありません。脈打つ周期と、星の本当の明るさとが、結びついているからです。
これに気づいたのは、20世紀のはじめ、アメリカのハーバード大学天文台で、南半球で撮られた星の写真を調べていたヘンリエッタ・スワン・リービットでした。
調べていた対象のひとつが、南半球の空に見える小マゼラン雲です。今では、天の川銀河のそばにある小さな銀河だとわかっています。リービットはその中に明るさを変える星を数多く見つけ、周期のわかった星について、周期と明るさを並べてみました。すると、周期の長い星ほど明るく見えるという、きれいな関係が現れたのです。1912年、25個の星をもとに発表された結果でした。
この発見が決定的だったのは、星たちが小マゼラン雲という一つの場所に集まっていたからです。雲までの距離は約20万光年。これに比べれば、雲の中の星どうしの距離の違いは小さく、どの星も地球からおおよそ同じ距離にあるとみなせます。
同じ銀河の中にある星どうしなら、地球からの距離の違いは、それぞれの星の明るさの違いに比べて小さくできます。そのため、見かけの明るさを比べれば、星どうしの本当の明るさの違いを調べやすくなります。
距離がわからないままでも、星どうしの明るさを比べられたわけです。
周期-光度関係とは、古典的セファイドでは、周期が長い星ほど本当の明るさも大きくなるという関係です。

ゆっくり脈打つ星ほど明るい理由|大きな鐘ほど、ゆっくり鳴る
では、なぜ周期と明るさが結びつくのでしょうか。
お寺の大きな鐘は、ゴーンと低い音で鳴ります。風鈴は、チリンと高い音です。低い音とは、揺れがゆっくりしているということ。同じ鐘の仲間なら、大きいものほどゆっくり揺れます。
星の脈動も、これに少し似ています。星が大きく膨らむほど、星の内部を伝わる波が星全体を行き来する時間も長くなり、脈動の周期は長くなる傾向があります。
そしてセファイドは、特定の温度範囲にある星が、内部の働きによって規則的な脈動を起こしている星です。星の大きさや温度などが関係することで、明るさと脈動周期の間に決まった関係が生まれます。
つまり、ゆっくり脈打つセファイドほど明るい、という関係には、星の大きさと内部の脈動のしくみが関係しているのです。星の脈打つリズムには、その星がどれくらい明るいのかを知る手がかりが含まれているのです。
明るさは遠さで薄まるが、リズムは薄まらない|距離が測れる理由
夜道の街灯は、遠くのものほど暗く見えます。同じ明るさの電球でも、距離が2倍になると、届く光は4分の1になります。光は四方へ広がりながら進むので、遠くへ行くほど薄まるからです。
裏を返せば、本当の明るさがわかっている光なら、見かけの暗さから距離を逆算できます。問題は、多くの星では、見かけの明るさと本当の明るさが一致せず、見かけの明るさだけでは本当の明るさまではわからないことです。暗く見える星が、近くの暗い星なのか、遠くの明るい星なのか。見た目だけでは区別がつきません。

ここで、周期が効いてきます。
たとえば、夜空に同じくらいの明るさで見えるセファイド変光星が2つあったとします。片方は5日ごとに、もう片方は30日ごとに明るさを変えています。
周期-光度関係によれば、30日ごとに脈打つ星のほうが、本当はずっと明るい星です。それなのに、見かけの明るさは同じ。ということは、30日の星のほうが、ずっと遠くにあるはずです。
どれだけ遠いかも決まります。本当の明るさが4倍ちがうのに同じ明るさに見えるなら、距離は2倍ちがいます。距離が2倍になると光は4分の1になる、という関係を逆にたどればよいのです。
ここで大事なのは、周期は遠くから見ても変わらないことです。明るさは距離とともに薄まりますが、リズムは薄まりません。近くで見ても、1億光年先から見ても、5日ごとの脈動は5日ごとのまま。
距離を求める手順は、3つの段階に分けられます。
- 明るさの変化を何度も記録して、周期を測る
- 周期-光度関係から、その星の本当の明るさを知る
- 見かけの明るさと比べて、どれだけ遠いかを計算する
こうして、明るさが変わることそのものを利用して、星までの距離を求められるのです。遠くの銀河にあるセファイドも、明るい星だからこそ一つひとつを観測できます。
目盛りを合わせるのは、近くの星の年周視差
ただし、ここまでの話には、ひとつ足りないものがあります。
リービットの関係からわかるのは、周期の長い星が、短い星の何倍明るいかという比べ方までです。本当の明るさそのものを、たとえば太陽の何倍と数字で言うには、いくつかのセファイド変光星について、距離を別の方法で確かめておく必要があります。物差しに、目盛りを刻む作業です。
その役を担うのが、地球の公転を利用して、星の位置のわずかなずれから距離を求める年周視差です。
近くのセファイド変光星の距離を年周視差で測り、見かけの明るさと合わせれば、本当の明るさが数字で決まります。こうして目盛りを刻んだ物差しを、遠くの銀河のセファイド変光星に当てはめていくわけです。
年周視差の測定は、宇宙から星の位置を測るガイアなどによって、精度が大きく向上しました。天の川銀河の中にある、たくさんのセファイド変光星について、目盛り合わせが進められています。
宇宙の距離は、近い物差しで合わせた目盛りを、より遠い物差しへ引き継ぎながら測られています。年周視差がそのはしごの一段目なら、セファイド変光星はその上の段です。
アンドロメダ銀河が、天の川の外にあるとわかった理由

秋の宵、アンドロメダ座のあたりに目を凝らすと、街明かりの少ない場所なら肉眼でも、ぼんやりとした楕円形の光のしみが見つかります。アンドロメダ銀河です。
100年ほど前まで、この光のしみの正体は、はっきりしていませんでした。天の川銀河の中にある、ガスの雲のようなものなのか。それとも、天の川銀河の外にある、別の巨大な星の集まりなのか。どちらの考えにも、決め手がなかったのです。
決め手になったのが、セファイド変光星でした。1923年10月、エドウィン・ハッブルは、アンドロメダ銀河を写した写真の中に、明るさを変える星を見つけます。観測を重ねると、その星は約31日の周期で脈打つセファイド変光星だとわかりました。
周期がわかれば、本当の明るさがわかります。本当の明るさがわかれば、見かけの暗さから距離が出ます。ハッブルが導いた距離は、約100万光年。当時有力だった天の川銀河の大きさの見積もりの、3倍を超えていました。アンドロメダ銀河は、天の川銀河の外にあったのです。
その後、目盛りの見直しが重ねられ、現在ではアンドロメダ銀河までの距離は約250万光年とされています。数字は大きく変わりましたが、天の川の外にあるという結論は揺らいでいません。距離の数字が変わったこと自体、目盛り合わせの大切さをよく示しています。
セファイド変光星でも届かないほど遠い銀河には、明るさを基準化できるIa型超新星が使われます。近くの銀河でセファイド変光星とIa型超新星を一緒に観測することで、超新星の明るさの目盛りを合わせ、さらに遠い銀河まで距離を伸ばしていくことができます。こうしてつないだ物差しの先で、宇宙が膨らむ速さまで測られています。その値をめぐっては、いまも議論が続いています。

まとめ
- 変光星は、星の側の理由で、明るさが時間とともに変わる星です。大気によるまたたきとは別のものです
- 代表的な変光のしくみには、2つの星が隠し合って見え方が変わる場合と、星そのものが膨らんだり縮んだりする場合があります
- セファイド変光星は、星の外側の層が膨張と収縮をくり返し、規則正しく明るさを変える脈動変光星です。北極星もこの仲間です
- 古典的セファイドでは、周期が長い星ほど、本当の明るさも大きくなります。これが周期-光度関係です
- セファイドの脈動には、星の大きさや内部のしくみが関係しており、脈打つ周期と本当の明るさの間に決まった関係が生まれます
- 明るさは距離とともに弱まりますが、周期は遠くから見ても変わりません。周期から本当の明るさを知り、見かけの明るさと比べれば、距離を求める手がかりになります
- 物差しの目盛りは、近くのセファイド変光星の年周視差で合わせます
- 1923年、アンドロメダ銀河の中のセファイド変光星から、この銀河が天の川の外にあることが確かめられました
明るさが変わる星は、明るさの物差しとしては、いちばん頼りにならない星に見えます。けれどセファイド変光星では、その変わり方のリズムに、本当の明るさを知る手がかりが含まれていました。
変わるからこそ、測れる。変光星が宇宙の距離を教えてくれる理由は、ここにあります。
秋の宵、北の空のケフェウス座でδ星を探してみてください。すぐそばのζ星とε星が、ちょうどよい比べ役になります。明るさの変化は大きくありませんが、晴れた夜ごとに見比べて記録すれば、5日あまりの周期で変化していることを確かめる手がかりになります。
そして同じ秋の空には、250万光年のかなたからアンドロメダ銀河の光が届いています。あの淡い光が天の川のはるか外にあることを最初に教えてくれたのは、北の空のδ星と同じ仲間の星の、脈打つリズムでした。
参考文献
- 天文学辞典(日本天文学会)|変光星
- 天文学辞典(日本天文学会)|セファイド
- 天文学辞典(日本天文学会)|周期-光度関係
- Harvard Wolbach Library|Henrietta Swan Leavitt: Variable Stars
- NASA Science|Hubble Views the Star that Changed the Universe
- NASA Science|NASA’s Webb, Hubble Telescopes Affirm Universe’s Expansion Rate, Puzzle Persists
- NASA Science|Messier 31 (The Andromeda Galaxy)
- AAVSO|Delta Cephei
- AAVSO|Beta Persei (Algol)